2008年5月10日(土)東京センチュリーライド イン荒川
2、3日前から天気予報が告げる当日の天気は芳しくなかった。当初「曇りのち雨」などと予報されていて、「ま、この時期の太陽は暑いし日焼けするから曇りくらいがちょうどいいか」と思っていたら、いつの間にか「雨、降水確率80%」なんてことになり、一番恐れていた「雨中サイクリング」が実現してしまったわけである。
今回のサイクルイベントは、荒川の河川敷のサイクリングロードをゆっくり走りましょうというほのぼのしたもので、とにかく楽しむことを優先するサイクルイベントである。センチュリーとは100マイルのことを指し、つまり160キロメートルなんだけど、今回のイベントではハーフセンチュリー=50マイル=80キロメートルを走行することとなっていた。80キロっても結構な距離である。葛西臨海公園をスタートして北上し、河口から40キロ、志木市の秋ヶ瀬さくら草公園ってところで折り返して戻ってくるコースなんだけど、東京の東側から北側にかけてほとんど土地勘のないしゅんすけにとっては、全然実感がわかなかった。だけど、途中では以前さきこが荒川マラソンで走ったコースと重なるので、それはそれで楽しみであった。
とにかく問題は天気なのであるが、もはや晴れる気配が1ミリもない状況では、腹をくくっていくしかない。来週は佐渡島を半周するレースに出場するしゅんすけとさきこにとって、1週間前のこの日が自転車に乗る最後の機会なのである。荒天上等、いざ出発!
スタート時間は参加者を複数に分けて順次スタートする形で、しゅんすけは8時30分のスタートの組であった。しかし、スタート会場は荒川の河口、葛西臨海公園である。しゅんすけにとってはもうほとんど千葉である。そんな遠方まで自転車を担いで行くというのはかなり骨な作業であり、早めに自宅を出たにもかかわらず、到着したのはしゅんすけがスタートする8時30分の5分くらい前であった。大会の受付なぞしていたら、もうスタート時間を過ぎてしまったので、やむを得ず次のスタートの組に混ぜてもらうことにした。周りを見回すといろんな自転車である。本格仕様の自転車にサイクルジャージをまとう人、小径車にGパンの人、ウケ狙い(なのか?)のママチャリの人もいた。こういうのを見てるだけでなんか楽しいものである。

※会場に到着して撮影。いろんな自転車があるのが、もうそれだけで楽しい。

※スタート直前のさきこ。
そしてスタート。しゅんすけの80キロを目指す旅が始まったのである。
最初は河口付近の自転車道を走る。いや荒川ってでかい河だなー。
今回のイベントでは、10キロごとにエイドステーションがあって、そこで給水したり休憩したりできるのに加え、そこが任意の折り返し地点になっていて、参加者は自身の体力に応じてそこから引き返し、最終的に20キロ、40キロ、60キロ、80キロのどれかを走ることになるわけである。
最初のエイドステーションは10キロ地点であった。
まだまだ全然余裕なしゅんすけとさきこ、支給されたバナナを食べて、早々に自転車にまたがった。
しばらく行くと、周囲の景色がだんだん明るくなってくるのを感じた。空を見上げると、曇天の中、薄くなった雲に太陽の輪郭が見えるようになっていた。そして足元に淡い影が落ちていた。おお、このまま晴れてくれるのか?と期待するも、顔を打ち付ける雨滴が絶えることはなかった。でも、この仄かなの日差しはしゅんすけに力をくれたな。ホント気持ち良かったもんな。(これで晴れてくれてたら、そりゃもう・・・)

※(左)曇天の中をゆく。(右)最初のエイドステーション。
ところで、今回のしゅんすけの愛車・こてつ号には、新しい装備を装着していた。
ちょっと大きめのサドルバッグである。このバッグには交換用タイヤチューブとか工具とかが入っている。もともとリュックに入れていたものなんだけど、今回のイベントでは携行する荷物が増えることを予想して、別にバッグを用意した次第であり、いずれにせよ来週の佐渡ロングライドでは必要になるはずのものである。ところがこのバッグがなかなかの曲者で、このバッグに同封されていた金具の寸法が微妙に合ってなくて取り付けに当たってしゅんすけがヤスリで微調整せなイカンかったし、自転車に取り付けて走ってみると、その振動でズリズリと下がってきてしまい、下部がタイヤに接触してしまう状況で、ちゃんと調整するのはかなり難儀であった。自転車の設備に関するモノを自転車自体に搭載するというコンセプトは成功したけど、ここまで来るのに非常に苦しめられた感じであった。でも、こてつ号のフォルムが少し変わったのはちょっと楽しいのであった。

※川沿いの爽快ツーリング。
ところどころでさきこを撮影するために停車したんだけど、ある時、自転車に乗った妙齢のお姉さんが声をかけてきて二人並んでいるところの写真を撮影したいと頼まれた。自転車には「PRESS」の文字があって、どうも自転車雑誌の記者のようであった。また別の場所では、某マンションデベロッパーの広報を名乗る女性にさきこの自転車の写真撮影を頼まれた。マンションと自転車がどう関係するか分からないけど。いつか何かの雑誌に乗るかもしれないね。
さて、しゅんすけとさきこの旅は続く。
遠くまで延々続くサイクルロードの風景が見覚えのあるものになった。さきこが出場した荒川マラソンのスタート地点である。ちょうど30キロのエイドステーションの場所であった。ここでも給水とバナナ、一体このコース上には何本のバナナが用意されたんだ?ってくらいのバナナ攻めである。少しバナナに飽きてきた。そういえば家を出る前にサンドイッチを食べたきり、何も食べていない。あぁ、米が食いたい、おにぎりが食べたい、それも梅のおにぎりが・・・などと思いつつ、さらに進んでいくと、前から自転車に乗った集団が走ってきて物凄いスピードですれ違った。きっと今回のイベントで最初にスタートを切った組が40キロを折り返してきたんだと思う。このイベントはレースじゃないんだけど、なんか微妙に先頭争いしてる雰囲気が漂ってたな。
さっきまで見えていた太陽の輪郭は既に厚い雲に隠れてしまい、顔にあたる雨滴の数はだんだん数を増し、好意的に言ってもそれは雨であるとしか言えない状況になってきた。もはや天気にかける期待はカケラすらなく、どこまでも黒く湿ったアスファルトが続くだけだった。
行き違う参加者の中に見知った顔をみつけた。さきこのランニングクラブ仲間のまゆみちゃんである。彼女は去年の東京シティサイクリングでも一緒だった。先日のウルトラマラソンではさきこよりも先にゴールするというハイパー豪脚の持ち主である。彼女としばらくお話ししたのだけど、彼女がまだ手をつけていないおにぎりをくれるというのでありがたく頂戴した。いや、まさに欲していたおにぎり(しかも梅干!)だけに非常に美味しかった。
彼女と別れてしばらく進むと、アスファルトが切れて砂利道になった・・・っておいおい、この仕様の自転車に砂利道はキツいよーと思ったら、道脇に田んぼが現れた。あっれー、サイクルロードを走ってたのに、いつの間にか農道を走ってるよ。周囲の雰囲気はまさに田園地帯であった。そしてまだ植えられたばかりの稲田の向こうに、最後のエイドステーション、40キロの折り返し地点が見えたのである。
ついに行き着くところまで行き着いた。いや、雨の中、よくここまで走ってきたものである。バナナを食べる(またバナナか!)さきこの顔にもいくばくかの安堵感が漂う。

※30キロ地点のエイドステーション。荒川マラソンのスタート地点近くでもあった。

※水門の形にもいろいろあった。向こうに小さく参加者が見える。

※40キロ地点のエイド(バックに「AID40km」の文字。
このエイドステーションで80キロを走破した証明となるシールを貼ってもらう。さあ、ここから来た道を戻るわけである。体力的には何ら問題はなかった。雨とは言え、平坦な道を淡々とこいできただけで、体力を使うような場面はなかったけど、40キロを走破してきて疲労を感じない自分がウレシかった。
休憩もそこそこに自転車にまたがるとまた農道的サイクルロードを走る。雨脚が少し増した感じ。自転車は楽しいけど雨はやっぱり嫌だよなーと思って足元を見てびっくり!脚が泥だらけじゃないか。よく見ると自転車にも泥が付いている。あぁこの農道ロードがいけない。こんなトコを走ってたらドロドロにならないわけがない。うあぁ・・・こりゃ困った。こんな脚じゃ電車の乗って帰ることもできないし、それにこの日は楽団の練習があって、駅まで楽器を運んできたのである。(この日は自転車をバラして輪行しただけでなく、楽器も運ぶという荒業というか「荷物持ち罰ゲーム」な感じだったのである)雨の中で自転車に乗るというのは、つまりこういうことである。あぁドロドロになる覚悟が足りなかった。
葛西臨海公園までの復路は、強くなってきた雨脚の他に向かい風に苦しめられた。強い風が前から吹き付けて、往路で25キロくらい出せたのに、ここでは20キロにも満たない。気づかなかったけど、往路は追い風だったのだろう。河川敷のレースは、ランニングでもサイクリングでも風は追い風か向かい風しかない。横風というのは地形の関係でほとんどないのである。荒川を吹く向かい風には、さきこは荒川マラソンを含め既に2回も苦しめられていたから、相当イラついていたようである。
この向かい風のせいだろうか、自転車に取り付けたサイクルコンピュータに表示される走行距離の伸びが鈍化した感じである。往路はあっという間に10キロを走り、「え、もうエイド?」ってな感じだったんだけど、復路ではエイドはなかなか現れてくれなかった。疲労が無視できなくなってきた。雨は一向に止まない。

※雨が強くなってきた(40キロ地点)

※写真じゃ分かりにくいけど、泥だらけの脚。

※写真じゃ分かりにくいけど、こてつ号も泥だらけ。
延々と続く道。ひたすらペダルを踏み倒す。特に60キロから70キロの間の10キロは、体力的にも精神的にも一番キツかったな。70キロが見えた時には、ちょっとウレシかった。これでこのレースは走破したも同然という感慨に満たされた。川幅が目に見えて広くなってきた。河口が近い。そして葛西臨海公園のシンボル的な観覧車が見えた。おおっ、ゴールだ。ついに走りきった80キロ、ツバサよ、あれが葛西臨海公園だ!
公園のアーチをくぐり感動のゴール!・・・と思ったら、さきこがコケていた。どうもゴール直前で、既にゴール済のまゆみちゃんに声をかけられて、振り向いたら前方に止まっていた自転車と衝突したみたい。さきこにも自転車にも支障はなかったのが幸いである。

※復路はホント遠い道のりであった。
自転車もドロドロだけど、しゅんすけ自身もドロドロであった。服は雨でびっしょりなだけでなく、自転車の後輪がはねた泥を背中に浴びて、背負ってたリュックとパンツが泥だらけになっていた。ここで初めて寒いと思った。そして着替えを一切持ってこなかった自分を責めた。いやマジで失敗した。
とにかく自販機でコーンポタージュを購入。いや、五臓六腑に染み渡るコーンポタージュで身体が温まった。
今回のイベントはドロドロになって大変だったけど、久々の自転車イベントで80キロを走れたのは来週に向けて自信になった。これはさきこも同様である。果たして来週はどうなるか。少なくとも雨だけは避けたい。
かさばる輪行バッグを持って駅の階段を昇るしゅんすけはふと思った。
「てるてる坊主ってどうやって作るんだっけ?」
おわり。 |