2008年8月31日(日)THE HUMAN RACE 10K〜荒天と荒天のハザマ

富士山のふもと、本栖湖で開催された「THE HUMAN RACE 10K」に参加してきた。これはスポーツメーカーのナイキが世界中のランナーに呼びかけてこの日同時に開催した世界的イベントで、つまり世界中の人にこの日10キロを走ろうと呼びかけるイベントなわけで、これにより自分の世界ランクが出るというもの。世界中のランナーと対決する点でまさにオリンピックの興奮冷めやらぬこの日にうってつけのイベントである。「興奮冷めやらぬ」・・・って、しゅんすけはもともと北京オリンピックに情熱をそそいでいなかったという理由からだけじゃなく、このイベントの参加にはかなり消極的だった。その理由は最近の天候である。先週に三浦半島一周サイクリングを中止に追い込んだ雨天は、時折わずかに和らぐものの、その勢いは増していき、夏の風物詩である夕立なんて言葉では済まされない豪雨・ゲリラ雨となって日本を席巻し、床上浸水や水没自動車をはじめ、死者すら出る大災害になっていた。これが1週間続き、前日の土曜でさえ、夕方から土砂降りの雨に見舞われたとあっては、ただでさえ強力な雨雲吸引能力を誇るしゅんすけの参加するイベントで、荒天は避けられないと思うにつけ、久々のイベント参加で楽しみにしていたけれど、前日には「参加すべきか否か」を真剣に悩むに至ったわけである。ここで無理に参加したら、雨中レースで10キロをへろへろでゴールしたしゅんすけを冷たい雨が容赦なく降り注ぎ、体温がどんどん奪われ、結果として風邪を引くことになってしまう・・・そんなことになったら、翌週はどうなるのか。翌週・・・そう、富士山麓の道路を自転車で巡るMtFUJIエコサイクリングは、来週なのである。今年もっとも気合を入れているこのイベントに万全の体調で臨めないことの悔しさったら筆舌に尽くしがたいわけで、イベントを1週間後に控えたこの日は、無理に走る必要はないと思ったわけだ。
加えてスケジュールの面でも、雨天だった場合はしゅんすけを過酷に苛む。本栖湖へ向かう手段は主催者側が用意した直通バスで、横浜から会場に直接向かうのだけど、このバス、行きはスタートに間に合うように行ってくれるくせに、レース後は会場で延々と開催されるライブイベントが完全に終了するまで発車しないのである。つまり10時頃始まったレースが終わって、延々とライブを見て、それからやっと帰途に就けるというわけで、この帰りのバスの発車時刻が18時・・・、18時ってなんだよ。10時にレースが始まったらしゅんすけの脚でさえ1時間程度でゴールするわけで、11時過ぎ、どんなに遅くても12時にはゴールできているわけで、その後若干食事したりショップを見て回るにしても6時間も会場に留まるってことは絶対にない。そもそも身体は疲れていて休息を求めているのにライブなんか観てられるか。しかも、いつゲリラ雨に見舞われるかも分からない、いや最悪、ゲリラ雨の中、身体が冷えていく中、バスの発車を待って延々と続くライブを観ていないといけないかもしれないのである。いや、ネガティブ思考なのは分かるけど、これによって体調を崩すことを恐れるあまりである。天気予報はほとんどアテにならない。それどころか、後でツッコまれないように「明日も不安定な天候で・・・」などと曖昧にかわしている。
そんなわけで、天気をめぐるしゅんすけの思いが交錯する中、レース前日の宵は更けていったのである。

さて、翌日の朝である。
早速窓の外を見てみると、雨は降っていない様子。曇りではあったが、今にも雨滴がこぼれそうな暗い雨雲ではなく、明るいグレーの雲。そして、その雲の隙間に見える青いエリア。
こ、これは晴れるかもしれない!
途端に目が覚めたしゅんすけは怒涛のように準備を始める。脳みその中の「レース本番の朝」というチャンネルにスイッチが入った。雨天への不安はあったけど、気持ちは既に10キロレースに向けてウォーミングアップを始めていた。

横浜からバスに乗って東名高速から本栖湖を目指す。
時折空を見るんだけど、太陽が昇ってきて気温が上がったためか、雲がどんどんなくなっていき、青い空のエリアが増えてきた。バスが走る湿ったアスファルトが次第に乾いてきた。これは最近見なかった晴れの日の風景である。強力な雨男しゅんすけの能力を大きく超えた晴れを呼ぶ誰かのおかげなのか。そういう意味では晴れるのは当然とも言える。なぜなら、8月31日、この日に晴れを期待して心にてるてる坊主を吊るしていたランナーは全世界に100万人いたのだから。
なんかしゅんすけの思いに100万人が同調した感じさえした。

朝霧高原の中をバスが走る。
いや、この辺はしゅんすけはほとんど来ない場所だけど、景色のいいトコロである。この道は来週自転車で走る道である。果たして来週はこの道をどんな状態でしゅんすけは走るのか、気になるのはそればかりである。
会場に到着するとかなり広い会場には、しゅんすけが今まで参加してきたどのランニングイベントにもない様相が展開していた。ランニングイベントというよりは、野外フェスティバル会場といった趣。イベント施設はこの日のためだけに建てられたにしてはしっかりとしてたし、巨大ステージに巨大スピーカー、ノリのいい曲がガンガン流れる会場は、地元のおばちゃんたちが豚汁を振舞ったりしてるいつものレース会場とはまったくの異次元空間。ハワイのホノルルマラソンもかくやといった感じである。まさにスポーツメーカー単体での開催に意地を見た感じである。そして、参加者が着るランニングシャツである。事前に配られていたシャツは、既にゼッケン番号が印刷してあって、レースに出る者はこのシャツ以外は着用できないという見事な誘導作戦のおかげで会場は見事に真っ赤っかであった。その赤いシャツが何千人と集まっている中にいると、どこかのお国の国家イベントに参加してるような気がして気分が悪くなってくる。この没個性は一体何を意味しているのか。


 



 

さて、スタートの時刻である。
その時スタート台には、先日の北京オリンピックで大活躍した陸上選手が登場し、会場は大歓声に包まれた。う〜ん、この盛り上がり、つい先月開催された富士登山競走の地味なスタート、荒涼としたゴールを思うにつけ、もはや別の競技かとさえ思ってしまうわ。
でも、レースが始まってしまえば、他のレースと変わらない。ただただゴールを目指すだけである。ただし、いつもと違うのは、今回のレースはさきこがしゅんすけと同じカテゴリーで参加しているということである。今まで同じレースに参加したことはあるけど、10キロやハーフといったカテゴリーが異なっていて同じスタートラインに立ったことがなかった。レースに出始めて3年目、ついにさきこと同じレースを走ることが・・・と思ったのもつかの間、さきこは軽やかな足取りでたったか走っていき、あっという間に見えなくなったのだった。

 

道中はしゅんすけの一人旅である。
それにしても、こう言っちゃなんだけど、今回のレースは初心者が多い。しゅんすけの目から見ても、日ごろあまり走ることのない人が多い感じがする。若さに任せてがんがん走っちゃう人、2キロ地点さえ過ぎていないのに既に歩き始めた人。そういえば参加者はみんな若い感じなのである。
そんな中、初めて走る本栖湖の湖岸の景色は最高にキレイであった。昨日までの荒天がウソのような青い空。穏やかな湖面に映る入道雲。さすが千円札にも描かれる風景である。たぶん、この湖はその際立った水深のせいもあって湖面が安定してあまり波が立たないのだろう。なんせ本栖湖は千円札の絵柄にも採用された絶景の場所なのである。
※関係ないけど、千円札のこの風景を「大瀬崎から見た沼津の風景では?!」と一人で色めき立って、沼津の当時の職場で騒いでいたのは今は昔である。

 

さて、3キロを過ぎて、引き続き本栖湖の湖岸の道路を走るんだけど、ちょうど日陰になっていてこの辺は走りやすかったかな。問題は5キロを越えて日差しの中に入ってからである。久々に太陽の照りつける焼けるような日差しに晒された。強烈な日差しだけど、不思議と暑さは酷くなかった。もう秋の陽気なのだろうかと思いつつ、それでも日差しの中を走るのはなかなかキツい。何とか1キロ当たり6分を維持しつつも日ごろの練習不足のせいで足取りは重かった。
キレイな景色にココロ癒されつつ、遠くにゴール会場が見えてきた(赤いシャツがたくさん集まっているのですぐ分かる)。コース上には走行距離を告げる立て看板のほかに、ランナーを鼓舞するようなコピーを書いた看板も立っていて、「きみの底力を見せてみろ!」とか「残り1キロ!辛いことを楽しんで」とか書かれていたのが何かこっ恥ずかしい感じだった。
そして、ゴール。やはり1時間を切ることができなかった。

 



かなりヘトヘトになったけど、先にゴールしていたさきこが出迎えてくれた。いや、こういう構図も初めてだわ。目の前に見える湖には、先にゴールしたランナーが脚を入れて冷やしていて、しゅんすけもその欲求に抗えず思わず靴を脱いだ。ひんやして、気持ちいい。それにしてもこの湖は急に深くなるのが恐ろしいな。さすが富士五湖でもっとも深い水深138メートルを誇るだけある。
ゴールした後は身体が冷えないうちにシャトルバスに乗り込みスタート地点のイベント会場へ向かう。このレースは湖1周ではないのだ。4分の3程度を走ってゴールするというちょっと中途半端なコースで、10キロであれば西湖が1周10キロなんだからこっちでやればいいのにとも思うわけである。ま、いずれにしてもこれで山中湖、西湖に続き3つ目の富士五湖制覇である。(今秋には河口湖を制覇する予定である)

 

イベント会場に到着して、身体を休めて、少し寝て、屋台の飯を食べて・・・あぁもう帰りたい。普通なら既に帰途に就いているハズなのに、なぜ未だレース会場にいないといけないのか。18時発のバスまでまだ3時間以上もある中、興味のないミュージシャンによる演奏、こういうスピーカーがんがんの演奏はもはや音楽の範疇を大きく逸脱していると思うのだけど、それを強制的に聞かされているあたり、ホント某国を想起させる。
ふと見上げると、会場の向こうに巨大な入道雲が立ち上がってきて、会場の頭上に黒い雲がかかってきた。つかの間の晴れはここで終了し、ここからはいつものパターンである。突然降り出した雨、雷雨にならなかったのは幸いだったけど、参加者の晴れを思う願いもここでそのチカラが尽きたというわけである。レインウェアに身を包み、雨を避けつつただ時間が過ぎていくのを、バスの発車時刻を待つばかりのしゅんすけたちに、声をかけてきた人がいた。某ランニングクラブの知人である。
彼は金曜の夜からこのイベントのために一人でこっちに来ていて、帰りも一人なんだそうな。しかも、彼の自宅はしゅんすけの住まうマンションの山のちょうど反対側というかなりのご近所さん。これは地獄に仏、渡りに船、闇夜に提灯、頼み込んで帰りをご一緒させていただくことにした。
彼は会場の本栖湖畔から離れた場所にある某駅の駐車場に停めていたそうな。会場から某駅までシャトルバスに乗り、雨の中バスは40分近く走り続け、彼に合流したのは、結局本栖湖でバスが出るはずの時刻だった。それでも、一般の乗用車での走行はかなり早く、バスで帰った場合の予想時刻よりも早い時間に横浜に戻ってこられたばかりでなく、結局自宅前まで送ってくれたので、気持ち的にとても助かったのであった。
※この人には、佐渡ロングライドの帰りに上大岡から自宅前まで送ってもらったという経緯もある。
※彼も言っていたけど、やはりこの日の参加者はランニングのためというよりライブのために来た感が強かったみたい。つまりライブを見たければ10キロ走るイベントに出にゃイカンというわけだ。なーる。



さて、かなり独特だったランニングイベントが終了したわけである。
暑さのせいもあって、いいタイムが出なかったけど、来週のサイクルイベントに向けて筋肉にいい刺激を与えられたと思う。さきこは予想外の日差しの強さに偏頭痛を患ってしまった。雨対策は万全だったけど、さすがにここまで晴れるとは思わなかった。
次の日にこのイベントのサイトを見ると、しゅんすけの世界順位が出ていた。
しゅんすけは1時間1分49秒、世界順位は103,767位(国内順位3,642位、国内男子順位2,942位)であった。
さきこは53分56秒、世界順位49,888位(国内順位1,646位、国内女子順位134位)であった・・・って、さきことしゅんすけではここまで差があるとはね。まさに桁違いのアイアン豪脚である。

おわり。