2007年6月17日(日)西湖ロードレース〜彼女接近遭遇
数日前の入梅にも拘わらず、前日からピーカンの晴天となった今回のレース。
彼にとっては初めての「2回目の大会」である。
去年は弱からざる雨の中、黙々と5キロを走る苦行のようなレースだったけど、今年は幸い晴れてくれそうだった。・・・いや、これが幸いなのかは走ってみるまで分からないけど。

前日に会場に到着できたので、受付を済ませ、ゼッケン番号を受け取る。
会場は去年とは違い、スタート地点から数百メートル坂を登った先にあり、しかもこの場所がゴールなのだそうな。
ま、去年のように雨でぐちゃぐちゃになりながらゴールするよりマシかもしれないけど、この長い上り坂はキツい。これを登らないとゴールできないというこのコースを考えたのは誰だ。

受付を済ませて会場をブラつく。
翌日の賑わいを前に、夕暮れ時の会場は、数人の参加者が会場内に臨設のショップにいるだけで、何となく寂しい感じだったけど、彼女はここで散々迷ってランニングウェアを購入。なんと、翌日コレで走るんだそうな。
彼もホントはシューズが欲しかったのだけど、今の泥だらけのシューズが泥だらけになったまさにその大会に出場することに何となくコダワッて、何も買わずに会場を後にしたのでした。

さて、夜が明けて当日である。
河口湖に面した民宿を出て、会場へ向かう。
天気予報どおりの晴天である。前泊して深夜以降は、湖畔だったこともあってか、かなり肌寒かったけど、太陽このままどこまで気温が上がっていくのか。

今回はまず彼の走る10キロ組がスタートし、その10分後に彼女とまりこさんの走る20キロ組がスタートする。
スタート付近でランナーがごった返す中、彼女と話してたら10キロレースが始まっちゃって、慌てて20キロ組の人を掻き分けてスタートしました。
さて、今回のレースはどうなるか。


※スタート直前の彼女とまりこさん。

※スタート直前の彼・・・ってか、この直後、10キロ組がスタートしてしまう。
じゅ、準備体操もしてないわ。

スタートしてしばらくは、去年走った道を走る。
そうそう去年もここを走ったよなーと思いつつ、去年とは違って、風が吹き抜ける木漏れ日の中を快調に走る。今回は、彼女から呼吸に合わせてペースを作るようアリガタいご指導があったので、割と負担にならなくて、しかも早めのペースを早くから掴むことができた。
いや、ホント、女性誌などは一切読まず、ランニング雑誌とか「Ta○zan」とか読んで日々研究に余念のない彼女はサスガである。
そんなわけで、あまり目印のない林道の中、いくつかの観光施設の看板を見ると、去年とは確実に疲労度合いが違うことが分かり、彼自身、多少は成長した感触を得た。タイムなんか度外視でレースに出場する彼にとっては、去年との違いを実感できたのがとてもうれしかったわけである。
去年は5キロレースに出場したので、2.5キロ付近で折り返したんだけど、去年とは違って、この時点でも全然疲労してなかった。「え?もう2.5キロ?」などと感じているのがうれしかった。

さて、それから程なく走っていくと、西湖に出た。
ここからは西湖沿いの道路となる。
(・・・ってか、去年は西湖沿いを走れなくて、残念な思いをしたのだけど、2.5キロの折り返しが、まさにほとんど西湖に出る一歩手前だったとは驚きである)
頭上を覆っていた木々の葉が途切れて、空が見える。それなりの水深を思わせる深い色をした湖面を向こう岸から風が渡ってくるのが感じられる。
う〜ん、先月出場した山中湖レースとは少し雰囲気が違うな。なんかこう空気の密度が違うっていうか、ひんやりしているというか、緑がキレイというか・・・このレースはなんか、いいな。

気持ちが良かったからなのか、彼のペースはほとんど変わらず、快調に走り続ける・・・って、たぶん時速8キロくらいで走行しているので、一般的には遅いペースだから後ろからがんがん抜かれるけどね。
でも、まずは止まらず歩かず10キロを自分のモノにしたいから、このくらいのペースでもいいのだ・・・などと思っていると、彼のすぐ脇を物凄いスピードで駆け抜ける集団があった。
そういや林道を走っている時に、遠くでどどんっと花火の音が聞こえたな。つまりこれは、20キロ組なんだな。時計の時間は、18分と少々。彼らは10キロ組に10分遅れてスタートしているから、彼を追い抜くのに8分程度しかかかってないことになる。いや、確かにトップクラスのランナーは1キロを3分程度で走るそうだから、彼自身が時速8キロで走ってたとしても、追い抜かれるのは道理なんだけどね。
それにしても、スゴいわ。
彼の周りで一緒に走っている人たちは、なんかポテポテポテって感じで走っているんだけど、その脇を車輪でも付いてんじゃないかって勢いでゴォォォォーっと駆け抜けていく。いや、端から勝負するつもりは微塵もないけど、このくらいの違いがあるものなのか・・・と実感した。

そして、同時に実感した。
このままのペースで走り続けると、彼女に抜かれてしまう・・・。

彼女のいつもの走りでは、もちろんすぐには追いついてこないのは分かってるけど、でも彼女は確実に彼の後ろにいる。まるで獲物に近づくチーターが草原の草に身を隠すかのように、ランナーたちに隠れて、次第に近づいてくる。そんな想像に彼はぞくっと背筋が寒くなった。に、逃げなければ・・・。

5キロ地点を通過。30分とちょっとだったから、少しペースが上がったかな。あと半分。山中湖の5キロ地点とは全然違って、気持ち的に苦しさに負けてない。いや、苦しいのは当然で、それにどれだけ前向きに向き合えるかだからね。特に走力のない彼にとっては、「最後の武器は・・・ゆ、勇気だけだ!」(byサイ○ーグ00○)ってわけじゃないけど、要は気持ちの問題なので。

西湖は湖を周回してるだけなら大きなアップダウンがなくて、いいコースである。彼にとっては、山中湖レースの中盤で出現した長い上り坂で相当ペースを狂わされた経験があったので、とても走りやすかった。彼のモチベーションを落とすような「極選!ほうとう」とかの看板もない・・・ないどころか、西湖は山中湖や河口湖と違って落ち着いている。集客のために媚びてないというかね。そういうところも好きなのだ。


※給水所付近。

※入り江の向こうにランナーが続く。
(こういう写真を撮ってるから・・・)

8キロを過ぎた。あと2キロ。ついに彼女が登場である。
ここは彼女の視点で語ることにしよう。

先週から風邪を引いて、咳が止まらない状況だったが、彼女はレース出場にいささかの迷いもなかった。先週末に購入した風邪薬は、3日飲んで効果がなかったので止めた。風邪は気合で治すのが、彼女流である。
それでも、西湖を2周する20キロレースが始まった直後に咳が出て、どうもいつものペースがなかなか掴めない。一緒に出場したまりこさんは先を走っているようだけど、まりこさんのペースが速いからだけではないかもしれない。
(彼女の後半のペースダウンは心配だったが、彼女の知らないところでまりこさんを抜いていたようだ)
走っている時には、彼女は周囲の様子はあまり見ないで、走ることに集中する。だから、あとで彼から「あの景色がキレイだったねー」などと言われても、よく覚えていないことがある。
それでも、後半8キロ過ぎ、小さな入り江を縁取りしたようなコースの向こうに彼のオレンジ色のウェアが見え、思わず呟いた。
「・・・ロックオン」

もちろん、彼を抜くことが目的ではないので、あくまでペースは乱さない。今の自分のペースなら、2周目に入る分岐までに彼に追いつくことができるだろう。まだ距離は離れているものの、彼は相当疲労しているのが分かる。
ふいに彼が振り返った。
普通レース中は振り向くことはない。もしかしたら、彼も彼女の追い上げを感じているのだろうか。
ここは妻として暖かい言葉をかけるべきか。彼は何と返してくれるか。2周目に向かう彼女を元気づけてくれるだろうか。
9キロを越え、分岐が見えてきた。
彼女は分岐を左に折れて、再度スタートゲートをくぐり、2周目に入る。
彼はそのまままっすぐ進み、急な坂を登ってゴールへ向かう。
彼が分岐を超える瞬間、彼女は彼の肩を叩いた。

「○△□※☆◎%&#$@*+¥!!!!!」
彼がなんか叫んでいた。彼女はそのままカーブを曲がって2周目に向けて駆け抜けていった。
なんだ、思っていたよりも元気じゃん。

ここで彼の視点に戻る。

・・・く、屈辱である・・・。
抜かれるなら9キロ付近だろうとは思っていた。
これもネタと思えば割り切れるし、持参したカメラで初の「走行中の彼女の撮影」ができるかもしれなかった。
けど、彼女は一向に現れず、もしかしたら、どこかで故障が発生したかもしれない。難しい計算は分からないけど、彼と彼女のペースの差では、恐らく9キロ過ぎで抜いていくはずで、そうであれば、既に彼の後方に付いているはずである。いや、できれば、抜かれたくないなー。
振り返ってみたものの、もはや走ることに精一杯の彼は、誰が後ろにいるかなんて見ている余裕もなかったのだ。
そして、目の前に坂が続くゴール前500メートル。
20キロ組とコースが分かれるその刹那、彼女が彼の肩をぽんと叩き、そのまま道を折れて2周目に向かっていった。
抜かれるとは思ってたけど、こういう抜かれ方をするとは思ってなかった。
・・・いや、これは厳密には抜かれていない。
だって、一瞬併走となった彼女は、道を左折して再び湖周回コースへ入ったのであり、彼の前を走ることは一度もなかったからである。
そうである、彼はまだ彼女に抜かれていない。
(彼女が彼をはるかに上回るペースで、10分遅れのスタートを挽回したことは、とりあえず置いておこう)

最後の坂道はキツかった。
とにかく長いのは分かってたので、なんとか上りきったと言う感じ。
でも、今回終始気持ちが崩れなかったのは、我ながら成長である。
なんせ、最後の直線は膝痛を押して、ラストスパートで駆け抜けたもんな。
それでも、タイムは1時間オーバー。タイム的にはかなり不満の残るレースだったけど、とにかく気持ちよく走れたのがうれしかった。
また走りたいと、初めて思ったのでした。


※走り終えた直後の彼。いや、疲れたわ〜。

※終わりました〜。

※彼は周囲のランナーをいろいろ見ながら走っているけど、今回はかなり仮装ランナーが少なかった。いつもは数人の仮装ランナーがいて、しかも彼らは決して走力がないから仮装しているわけじゃなくて、それなりの走力をベースに仮装してレースを楽しんでいる。
(そう思うと、どこかの吹奏楽団が「コンクールを楽しもう!」などと仮装して出場するのと根底が似ている気がする)
だけど、今回のレースでは面白い仮装に出会うことは少なかった。
さすがに仮装して出場するには、暑すぎるコンディションだったかな?
また一方で、ランスカ着用の女性も少なかった。
ランニング初心者がカワイイ感じのランニングウェアを着るというには、今回のレース自体23回も続いている割にメジャーな大会ではなかったということか。ま、あまり見かけなかったから、彼も集中して走れたんだけどね。
(女性のスカートが目の前でひらひらしてるのに、集中して走れるわけないだろう・・・ってか邪念が多過ぎか)

さて、これでロードレース春の部は終了である。
夏場は北海道とかを除いて、近場では大会がほとんどない。
しかし、今回のレースは彼にとって、とても有意義だったようである。
9月以降のレースにもぜひ参加してみようと思うのだった。


※上位者が掲載される掲示板に彼女の名前が・・・!
スゴいスゴ過ぎる!まさにアイアン・ウーマン!
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