2006年12月10日(日)ハワイ・ホノルルマラソン

ついに、彼女の想いが実現する時が来ました。
ホノルルマラソンに出てみたいとおぼろげに思い立ってから1年。
トレーニングを重ね、幾度かのロードレースで経験を積み、
その集大成が今まさに今日実現するのである。

※出陣前の彼女。

ハワイ・ワイキキビーチの通り沿いにあるホテルを出て、
スタート地点のあるアラモアナ公園を目指す。
深夜3時。
通りには、マラソン出場者が行き交っていた。
みんなそれぞれにスポーツウェアに身を包み、深夜のワイキキを歩いていく。
しゅんすけと彼女は、スタート地点のあるアラモアナ公園とは逆方向の
ホノルル動物園に向かう。
ここからアラモアナ公園まで無料の送迎バスが出ているんだそうな。

ホノルル動物園までの道中、今回のツアーを主催したアミ○○リューから支給されたオレンジ色の
ウェアを着た何人もの人とすれ違う。
それぞれ緊張しつつも、このお祭を楽しもうという雰囲気に溢れていた。
しゅんすけは、マラソンと同時開催の10キロウォークラリーに出場するため、
マラソン出場者の着けるゼッケンとは違う色の黄色いゼッケンを胸に着けていました。

ホノルル動物園に着くと、そりゃもう物凄い人の長い列ができていました。
こ、これ、全員マラソン・ウォークの参加者?・・・っていうか、
こんなに多くの人をバスが運ぶわけ?
たくさんの人が深夜の真っ暗な広場を埋め尽くし、列は大きくうねって長く続いていました。
オレンジの街頭に照らされた道路に、何台ものバスが出場者を乗せて、ピストン輸送していました。
スゴい、ホノルル中のバスがここに集まってる感じ。
観光バスからスクールバスまで、ありとあらゆるバスが集結してました。
このホノルル中のバスの協力があって、しゅんすけたちは物凄い人の数にも拘わらず、
それほど待つこともなくバスに乗ることができました。

そこからアラモアナ公園まで20分くらいかな。
歩いてアラモアナ公園を目指す大勢の人を追い抜きながら、バスは進み、
さらに大勢の人でごった返すアラモアナ公園に到着したのでした。
いや、もともと広い公園なんだけど、この人の数はスゴい。
今回の出場者は史上最高の2万8千人と聞いていたから、
この前の横浜マラソンの数倍だとは理解していたけど、これほどの数とは。
これが、みんな42キロを走るのか。
スタート地点のある道路上は、文字通り人で埋め尽くされ、遥か彼方にあるスタートゲートから
後方遥か彼方まで、とにかく人なのでした。
上空にヘリコプターが滞空していました。
この様子はどんな風に見えるのやら。
 
※(左)彼女の腕に刻まれた刻印。 (右)暗くて分からないけど、とにかく物凄い人です。

だんだんスタートの5時が近づいてきて、出場者がわらわらとスタートゲートの方へ
前進を始めたので、ここで彼女とお別れ。
次に会う時には、彼女はフルマラソン完走者になっているだろうか。

5時。
公園の向こうの空に尺玉の轟音を響かせて、巨大な花火が打ち上がりました。
ホノルルマラソンのスタートを告げる花火に、人々が大きな歓声をあげる。
ついに、ホノルルマラソンが始まったのでした。

※花火が打ちあがり、ついにスタートしたのでした。

さて、しゅんすけはしばしの待機。
目の前のマラソン組の人たちが去った後に、
しゅんすけの参加するレースデイウォークが始まると思って、ただ目の前のマラソン組の人たちが
通り過ぎるのを見ていたんだけど、突然アナウンスが入り、
「レースデイウォーク、始まりました!」
うえっ?始まっちゃうの?まだマラソン組が終わってないのに?
よく見ると、マラソン組の走る反対車線に別の人の流れがあって、
思いっ切り日本語で「レースデイウォーク」と書いてある幟がはためいていた。
なんだ、あの車線がウォーク組か。
とは言え、マラソン組を掻き分けて横切るのは、気が引けたので、
とりあえずマラソン組の最後尾まで回り込んで、ウォーク組の最後尾につけました。
う〜ん、しゅんすけのレースデイウォークは、なんかなし崩し的に始まっちゃったな。

※数分かけて、やっとスタートのゲートをくぐりました。

もともとタイム無関係のウォーキングを楽しむイベントなので、
みんな歩くのが遅いったらない。仲間と談笑しながらポテポテ歩いてる。
しゅんすけはできれば走り切りたかったんだけど、
ポテポテ歩く参加者が密集していて、走ることができなかったので、
やむを得ず当面はずんずん歩いて、とにかく抜き去っていくことに専念しました。

やっとスタートゲートを抜けると、ウォーク組もマラソン組も混合される。
見ると、たくさんのマラソン組の人たちが記念写真なぞ撮っていて
なんかお気楽参加みたいで、気が抜けた。
マラソン組って、もっと気合入ってるのかと思ってたよ。
「1K」と書いてある看板の前でも、マラソン組が写真なぞ撮っていて、
う〜ん、この人たち、ホントに完走できるんだろうか。
(っていうか、この人たち、42回も記念写真撮るつもりなんかな)

まだ全然夜が明けない暗い中、行軍が続く。
時折、周辺の住人が沿道に出て、声援をくれたりするけど、
基本的には静かな中、ざくざくという足音だけがホノルルのダウンタウンに響く。
最初の給水所は、見えた瞬間、洪水の後かと思うほど地面が濡れていて、
紙コップが大量に散乱していて驚いた。
この世の中、使い捨て文化と言いながらも、水を汲んで、選手に手渡して、ほんの数秒で
打ち捨てられるここまで短命な使い捨てグッズもそうないだろう。
ところで、給水カップを渡しているのが、地元の子供たちで、
「ミズデース、ミズデース」と一生懸命だったのは、可愛かったな。
(地元の子供たちは、年に1度、世界中からランナーが集まって、
自分の家の前を通り過ぎて行くのをどう思っているのだろう)

沿道の店が早々に店を開け、トイレを開放してるものだから、
物凄い長い列ができちゃってたり、まだ始まって5キロも行っていない道路脇で
懸命に脚の筋を伸ばしてる女の子とかを見ながら、しゅんすけはずんずん進んでいく。
2回目の給水所を過ぎて、しゅんすけは走り出した。

※給水所近く。路面に大量に散乱した紙コップ。

10キロのレースデイウォークでは、事前のコース図を見ると、
マラソン組と同じコースを辿り、ゴールのあるカピオラニ公園をかすめて、
ダイヤモンドヘッドの脇を抜け、折り返してカピオラニ公園に入るコースのようで、
そろそろエンジンをかけて走っておきたい。
ダイヤモンドヘッドの脇のスゴいアップダウンから、キレイな景色を見てみたい、
そう思って、しゅんすけは走り出したのです。
ところが、ワイキキビーチに到達する前で5キロの看板が見えた。
え?もう5キロ?
なんかしゅんすけの感覚では、まだまだ先は長い気もするが、ここで残り5キロに
なっちゃうんかな?

ダウンタウンを抜けてワイキキまで来ると、沿道の声援も盛り上がる。
やはり声援を送られるのはウレシイものである。
とは言え、しゅんすけの場合、走ってはいるけど、マラソン組ではなくウォーク組という
ちょっと微妙な人なんだけどね。

ワイキキビーチを抜けて、カピオラニ公園が見えてきた。
この先にダイヤモンドヘッドの長い急なアップダウンが控えているはずだ。
さあ、ここから気合を入れていかないと・・・「レースデイウォークのゴールはこちらでーす!」
・・・って、え?終わり?この先はないの?
見ると「RACE DAY WALK FINISH」の文字。
なんだ、終了かよ。事前に配られたコース図と違うやんか。
いや確かに、しゅんすけの感覚では、この辺が10キロなら合点がいくけどさ。

どうやらコース図の描き方がいけなかったみたい。単純にマラソンコースの一部をトリミングして
貼り付けただけの地図だから、誤解が生じやすい図だった。なんだよ、紛らわしい。
う〜ん、走ってみたかったな、ダイヤモンドヘッド。
すっげー景色がキレイだというので、かなり期待していたというのに。いや残念。
(正直、このままマラソン組に紛れて、ダイヤモンドヘッドまで走って
折り返してきちゃおうかとも思ったけど、
ダイヤモンドヘッドで折り返せば、マラソンの復路と同じコースを辿ることになるわけで、
ダイヤモンドヘッドから先は誰よりも先にマラソンの復路を走ることになるわけで、
それはつまり、マラソンの1位よりも先にフィニッシュラインを切ることになっちゃうから、
さすがにマズイだろうと思いとどまった)
日本人女性が独り言のように呟いていた「10キロってなんか虚しいね」の言葉に
とても同感なしゅんすけなのでした。

※ゴールがこんなに近かったなんて・・・失意のしゅんすけ。

何となく釈然としないまま、マラソンのゴールライン前の直線道路の脇に座っていました。
すると程なくして、最初のランナーがゴールイン。
2時間20分足らずで戻ってきたわけか、いや、やっぱ早いわ。
それに伴い、ゴール付近にも活気が出てくる。
空がだんだん白けてきました。
現在7時半、彼女は今どの辺を走っているのだろう・・・。

※だんだん白むダイヤモンドヘッドの空。

しゅんすけはこのまま彼女のゴールを待つことにしました。
たぶん、いつもの彼女のペースだと、現在25キロ付近。コースのアップダウンを
考慮しても、ちょうど半分を超えた辺りか。
空は既に青く、太陽は既に昇っているんだろうけど、ちょうどしゅんすけが座っている場所は
ダイヤモンドヘッドの影に隠れて、なかなか陽が差さない場所で、かなり寒かった。
(日の出を頂上にいただく富士山がダイヤモンド富士というけど、
同じシチュエーションで日の出を頂上に頂くダイヤモンドヘッドは、
ダイヤモンドダイヤモンドヘッドかなどとおバカなことを考えてる中、
目の前では日本人を含め、次々とランナーがゴールしていきました)

次々にゴールしていく人たちもいろいろで、
ほとんどが走ることだけを考えているんだけど、たまにパフォーマンス重視の人もいたりして
(そんな人がこの早い時間帯にゴールすること自体、スゴいことなんだけど)
バニーガールの格好をした女性やタキシードとウェディングドレスのカップルや、
「今年で連続29回完走!」と書いた布を掲げてゴールとか
この人たち、42キロも走ってきて、そんな精神的余裕がどこにあるんだろう。

ゴールする人の密度も上がってきて、道路はかなり混み合う状態になってきた。
走っている人の速度も徐々に落ちてきて、彼女の走行ペースに近くなってきている。
それなのに、彼女は未だ見えてこない。
彼女を待つしゅんすけのために、事前に取り決めたのは、ラスト2キロの辺りで
携帯電話に1コール入れるということ。
だから、しゅんすけが目を凝らしてランナーを見ていなくても、
事前に連絡はあるはずなんだが、4時間を過ぎても、連絡はなかった。
確かに、今回はフルマラソンだから、今までのようなペースでは行かないとは
思うけどね・・・何らかのトラブルが発生しているかもしれない、または故障してるかも。
不安に思いつつ、ランナーが走ってくる道路の向こうを見ることしかできないしゅんすけの
携帯電話が1コールだけ鳴って切れた。
9時半。
良かった、とりあえず生きていた。とりあえず、今なお走ってるようだ。

そして、待つこと20分。かなりペースの落ちた彼女が現れました。
おおっ、ついにここまで走ってきたか。

※たくさんのランナーの中に、オレンジのユニフォームを着た彼女が見えた!

沿道はかなりの人だったので、彼女のゴールシーンは見られなかったけど、
無事に彼女は42.195キロを走破したのである。
スゴい!念願のフルマラソンを完全走破した!スゴいっすー!

※ついにゴール前まで走り通した彼女。辛さと達成感の渦巻く不敵な笑み。

※海外の某サイトで、ゴールシーンの写真を販売してた。どうもこんな感じでゴールしたようだ。

彼女を労うために、ゴール付近まで行ったけど、なかなか彼女の姿が見えず、
ランナーでごった返すカピオラニ公園の中を散々探した。
彼女の姿が見えた時には、一緒に走ってたアミ○○リューの事務局の女性に
付き添われた形でやっと歩いてる感じでした。
さっきしゅんすけの前を通り過ぎた時には感じなかったけど、相当疲弊しているようでした。
どうも脚の付け根が物凄く痛かったみたい。
しゅんすけに支えられて、アミ○○リューのスポンサーテントの休憩スペースに辿り着くと、
そのままバタンと倒れこみ、動かなくなってしまいました。
身体中に鳥肌が立ってた。
イカン、脱水症状か?!と思ったら、単純に寒かっただけのようだけど、
とにかく脚が痛くてしょうがない様子で呻いていました。

すると、そこへスポンサーのスタジャンを着てカメラを携えたおじさんがすっと現れて、
しゅんすけの前に割り込み、物凄い手際の良さで彼女の足をマッサージし始めた。
何やら怪しげなジェルをふくらはぎに塗りたくり、懸命にマッサージしてくれたこの人は、
てっきり大○○薬の社員かなんかかと思ってたら、
後で聞いた話しだけど、日本ランニング学会の会長さん(!)だそうで、
最初は怪しげなオッサンやなーと思ってたけど、この適切なマッサージのおかげで、
彼女の脚の疲労は驚異的に回復したのでした。
しゅんすけが一旦ホテルに戻り、着替えやらタオルやらを取って戻ってくるまでに、
彼女は自力で立ち上がれるほどに回復していて、レース中の話しなどをしてくれました。

※ゴール直後の彼女。歩くのも辛そうな状態。青い布は、完走者だけが貰える完走Tシャツ。

マラソンとは、想像以上にキツいものだったそうです。
特に、心臓破りのダイヤモンドヘッドの上り下りは、往路の後、20キロ以上を走った後に
復路でもう一度通らにゃイカンわけで、彼女は往路の段階で
「この道をまた戻って来にゃイカンのか?!」とかなり精神的ダメージを受けたんだそうな。
そのため、20キロを通過した段階で、通常よりもかなり負荷が高かったみたい。
それでも、気持ちを保って、30キロをとにかく走り通したそうな。
30キロの看板が見えた段階で、「もうちょっと行ける」と思った彼女は
35キロまでは頑張ってみようと再度奮起し、35キロの看板を過ぎて、
そろそろ歩いてもいいかと思った瞬間、後ろから名前を呼ばれて
「さあ、もう少し、頑張って!」と声を掛けてくれたのが、
一緒にゴールしたアミ○○リューの事務局の女性で、
その頃には彼女の脚の付け根が猛烈に痛み出したんだけど、その人が一緒に走ってくれたので、
元気を振り絞り(歩くに歩けず)、結果的には一度も歩くことなく、ゴールできたんだそうな。
※スポンサーとは言え、事務局の人は一緒にフルマラソンを走らにゃイカンわけで
こりゃ大変な仕事だわ。

そんなわけで、彼女の初めてのマラソン挑戦は、
4時間40分33秒という好タイム・完全走破で幕を閉じたのでした。
いや、ホント、痛みに耐えてよく頑張った。感動した!

ホノルルマラソン 4時間40分33秒 5329位(完走24547人)

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