2007年2月18日(日)東京マラソン2007〜東京大追跡
ホノルルのフルマラソン完走から2ヶ月。
いわゆる「ポスト・ホノルル」として、彼女が早期から照準に入れていたのが
今回の東京マラソンでした。
ホノルルのフルマラソンから2ヶ月しか経っていない状態での
フルマラソン出場への不安はともかく、最近少し風邪が治ってきてくれた安心の方が
しゅんすけには良かったかな。
ところが、日が近づくにつれて判明する冷徹な事実、当日の降水確率70%。
ただでさえ、寒い折なのに、当日は雨、しかも小雨とか雲の切れ間から青空とか
そんな生易しいモンじゃなくて、雨。完全無欠の雨。

ヤバイなー、彼女だって、フルマラソンは今回で2回目。
前回のホノルルではかなりの好天が幸いして、好タイムで完走できたけど、
今回は大丈夫だろうか?
前日、楽団の練習から直接向かった新宿で落ち合うしゅんすけと彼女の手には
まだしとどに滴り落ちる雫を湛えた傘がありました。
明日の天気は、避けようもなく雨でした。
このまま、市ヶ谷駅近くのホテルに入る。
当日のスタート時刻を勘案して、前泊するのでした。

翌朝、いつもより早く起きた彼女は、早々に支度を済ませ、
中央線で新宿まで。応援に駆けつけてくれたまりこさんと合流して、
都庁前のスタート地点へ向かいました。
新宿西口の地下道は、出場ランナーで溢れ、ワセリンの独特の匂いと
雨の嫌な湿気に包まれていました。

※都庁前に向かう通路。物凄い人でごった返していた。

彼女は、この日のために用意した400円の雨合羽を着用。
周囲には、当日地下鉄で配られたであろうメトロのロゴ入りの
ビニール袋(首と両手を出せるように穴が開いている)を着た出場者が、
少々殺気立ってスタート地点へ歩いていました。
なんせ、外は雨。
ただでさえごった返す道を、みんな傘を差してるもんだから、
さらに混雑度合いが増している状態で、しかもスタート前の8時30分に
手荷物預かりが締め切られるとあって、湯気が出てるんじゃないかってくらい
ヒートアップしていました。
そんなごった返しの中、彼女は人波に消えて行きました。
もはやこの先は、出場者以外は立ち入り禁止ってことで、
しゅんすけとまりこさんは、少し離れたところへ移動して、
ランナーを待つことにしました。

※スタート地点へ向かう参加ランナー。搬送トラックに荷物を預かってもらう。

スタートを待つ間も、雨がしとしと降ってきて、身体を冷えさせる。
周囲にはトップランナーを追うために撮影チームや白バイが準備していて、
ただガランとした路面に雨が信号の灯りだけを映していました。
いや、ホント寒かったわ。

※雨の中、ランナーを待つ。

9時5分。
車椅子でのレースがスタートし、しゅんすけたちの前を
物凄いスピードで車椅子が過ぎて行きました。
にわかに興奮が沸き起こり、周囲が歓声に包まれた後、遠くのビルの谷間から
響くような低い歓声が伝わってきた。
人の声の集合とは分からないほどの地響きのような音が響いて
9時10分、マラソンがスタートしたのでした。

※トップランナーがスゴいスピードで通り過ぎる。

数人のトップランナーが物凄い勢いで走り抜けると、
その後を続く市民ランナーの波がどどどっと押し寄せて、
さっきまで閑散としていた道路が一気に人で埋まっていきました。
出場者3万人、いや確かに、ホノルルマラソンも同じくらいの出場者だったけど、
スタート時刻が朝5時で暗かったこともあってよく分からなかったけど、
同じくらいの出場者が目の前を通り抜けていくのは、壮観だったわ。
仮装した人もかなりいたようで、いい意味の市民マラソンの良さが出ている感じでした。
彼女を探して、目を皿のようにしているけど、
3車線の上下車道、30メートル近い道路に人が溢れている中、
彼女を探すのはかなり困難だったけど、道路の反対側を走る彼女を一瞬目で捉えることが
できました。まりこさんの声援も彼女には届かなかったろうな。
なんせ、みんな雨合羽を着ているわけで、しかも例のメトロ合羽はビニール製なので
衣擦れならぬビニール擦れの音がすごくて、一人ひとりはガサッ、ガサッって音なんだろうけど
数千人以上でのその音は、百頭のステゴサウルスの寝息もかくやといった感じでした。

さて、とりあえず彼女を視認できたしゅんすけとまりこさんは、
そこから急ぎ足で新宿へ向かう。
新宿に勤めるまりこさんは、大勢の観客で賑わう通りを避けて、
人のいない裏道やビルの非常階段を駆使して(おいおい)、西口の地下道へ入り、
そのまま中央線に乗って、最初のチェックポイント・飯田橋へ。
うまく電車に乗ることができて、車窓を眺めていると、
市ヶ谷辺りでマラソンコースをお堀越しに併走する形になって、
車窓からの異様な光景を眺めながら、飯田橋で下車し、早速観戦スポットへ。
ちょうどいい歩道橋があったので、上から観戦したかったんだけど、
ボランティアの方から観戦のために歩道橋で立ち止まってはいけないよう注意を
受けてしまったので、やむなく反対側の車線から、彼女の通り過ぎるのを待つことに。

※中央線の車窓から見た東京マラソン。市ヶ谷周辺。(左の建物はこの日前泊したホテル)

※飯田橋駅前のカーブ。

実は東京マラソンでは、観戦者をサポートするいろんなツールが用意されていた。
ひとつは折りたたみ式のコース地図。
これは地下鉄などの交通機関も併記されているので、
どこで観戦したければどこで下車すればいいかをひと目で教えてくれる便利ツール。
(東京地下鉄路線図もついていて、とても重宝した)
もうひとつは、ネットを駆使したランナーの通過タイム表示ツール。
ランナーには、タイムを正確に測るために、ICチップが渡されていて、
みんな靴に結びつけるようになっている。
(これは、前回の神奈川マラソンでもそうだった)
そのチップを利用して、各ポイント通過タイムをウェブ上にアップすることで
ランナーのゼッケン番号が分かっていれば、ネットで通過タイムを知ることが
できるというスグレもの・・・のハズだったんだけど、なんせ更新が遅い。
たぶんアクセスが殺到しているのか、「調整中です」の文字が長く表示されて、
やっと彼女の5キロ通過タイムが表示された時には、
既にそれから15分も経過していた。
飯田橋は5キロ過ぎ付近だったので、これは完全に彼女をやり過ごしたと判断。
もはや飯田橋には用はない。
次のポイントへ向かうことにした。
当初は、飯田橋で彼女を確認した後、最初の長丁場の入口である日比谷で
彼女を待ち構える予定でした。
日比谷から延々品川まで走るというのは、普段チンクでその辺を走っているしゅんすけには
分かるけど、かなり単調でキツいコース。
まだ始まったばかりで、身体的疲労はないにしても、
精神的疲労を負う前に、彼女に声援を送っておきたいところ。
しかし、飯田橋での予定外の事態に、時既に彼女は皇居付近を走行していると判断。
ここは日比谷を諦め、泉岳寺で彼女を待つことにしました。
品川や三田でも良かったんだけど、交通アクセスのいい主要駅は観客が多くて
彼女を探せるだけのスペースを確保できない恐れがあったので、
比較的マイナーな(でも、しゅんすけにとっては思い出深い)泉岳寺で
彼女を待つことにしました。

地下鉄を乗り継いで、泉岳寺へ。
品川へ向かう下り車線で彼女を待っていたんだけど、これがなかなか来ない。
いつもは目の前を行くランナーのスピードを彼女のスピードと比較することで、
ざっくり「まだ来ないか」「もう行っちゃったか」が判断できるんだけど、
今回はどうも判断できるスピードの帯域にあてはまるランナーの数が多すぎて、
彼女と似たようなスピードで走るランナーが大量に流れていくから、
どうにも判断できませんでした。
このままでは、彼女を一度も確認できないまま、マラソンが終わってしまう。
やむを得ず、再度地下鉄へ戻り、改札口の前を通って反対車線側に出ました。
さすがにこの時間帯なら、品川を回って15キロ以上を走っていることはないだろうと
踏んだわけです。
ところが、意外にもさっき上り車線で見かけたランナー(かなり特徴ある仮装をしている)が
わらわらと戻ってくる。泉岳寺から品川の折り返しは、意外にも近かったよう。
それでも、しばらく目を凝らして待っていると、雨の中目立つ帽子を発見。
彼女がやってきました。

しゅんすけとまりこさんの声援を笑顔で返す彼女。
まりこさん曰く「笑顔で走るなんて、結構余裕だ」と言うのを
「いや、ありゃ余裕ないな」としゅんすけ。
いや、実際分からないけど、そろそろ厳しくなる頃ではないだろうか。
彼女はこのまま日比谷まで戻り、銀座・日本橋を経て、浅草へ向かう第二の延々コースに
入っていくわけだから。

※彼女を発見。

さて、彼女を確認できた段階で、そのスピードや周囲の人の特徴を把握できました。
これで、彼女のスピードを想定しながら移動できます。
あの調子だと銀座で待つのは危険なので、一気に日本橋へ向かうことにしました。

冷たい雨は時折強さを増したり、弱まったりしながら、それでも止む気配を見せないまま。
ネット追跡ツール(?)も、既に20キロ地点を過ぎようかというのに、
最初の5キロ地点のタイムを表示したまま、「調整中です」を表示し続けていました。
ええーい、もう使わん、こんなツール。
ツールを信じたしゅんすけがバカだった。これからは、彼女を追跡し続けてきたしゅんすけの
勘だけで、追跡を続行することにしました。

日本橋で待っていると、さっき泉岳寺で通り過ぎた仮装ランナーが
順位の変更はあるものの、次々と通過していきました。
さて、ここでは彼女を捕捉できるか?

来た。

※走り抜けていく彼女。背中に「SAKIKO」の文字。

※まりこさんは最近一人暮らしを始めて、ネット環境を構築するために
電話業者からの工事の日程かなんかの通知を待っていたんだけど、
丁度この時、まりこさんの電話が鳴って、しかも取ってしまった。
「いや〜、最近申込者が多くて、なかなか伺えないんですよ〜」などという電話業者の
しょうもない状況報告をうんうんと聞いていたら、その前を彼女が通り過ぎていって
しまったそうな。なんて間の悪い・・・。

さて、日本橋、クリア!
次のポイントに向かう。
次は蔵前。
浅草・雷門の前を折り返す彼女を捕らえる。
浅草まで行っちゃうと、物凄い観客だろうし、浅草橋では両国辺りから人が
流れてくるので、ここでも比較的マイナーな駅前での彼女の捕捉を狙う。
目の前に交通整理のボランティアのおじさんがいて、
しゅんすけが無言で路上を真剣な眼差しで見ているのがかなり奇異だったようで、
「う〜ん、もう行っちゃったかなぁ」とか「あれ、あの人さっき見かけたな」とかの
呟きに、いちいち反応してた。
そんな刹那に彼女が現れ、大声で声援を送るものだから、彼も驚いていた。
去り際に「会えて良かったなぁ」と言ってくれた・・・が、既にしゅんすけたちは
別のポイントを目指して走り出していた。

※彼女を発見。

※顔が隠れちゃった。残念。

※浅草を引き返してきた彼女。

蔵前、クリア!
次のポイントは、月島。
銀座でコースを折れて、海へ向かうところを捕らえてもよかったんだけど、
ゴールに近いところ、しかも最後の難関とも言うべき、アップダウンの連続辺りで
彼女を応援することにして、電車を乗り換えて月島へ向かう。
築地を経て、この月島から有明へ向かうコースは、いくつかの埋立地を過ぎていくので、
その度に橋を渡らにゃイカンので、橋の始めと終わりにかなり冗長なアップダウンが
あるのです。
その最初が月島近くの佃大橋でした。

月島へ着いて、地上に出ると、目の前に巨大な高架が現れ、しかもその上を
ランナーたちが走っていくのが見えた。
なに?この上で走ってるの?
辺りを見回すと、丁度橋に合流するための坂が見えたので、
しゅんすけとまりこさんはそこから猛然と走り始めました。
ちんたら登ってたら彼女が行き過ぎてしまうかもしれない。
最初の飯田橋を除いて、すべてのポイントで彼女の捕捉に成功していた二人には、
もはやここで捕捉に失敗するのは許されない。
かなり急な坂道だったけど、一気に駆け上がりました。
通り過ぎるランナーたち。
どこか見覚えのないランナーが次々と通り過ぎて行きました。
気のせいか、少々ペースが遅い。
35キロも過ぎようかというこの辺りで、この長い上り坂を登らにゃイカン状況に
そろそろ身体が音を上げ始めたからだろうか。
見覚えのないランナーがかなりゆったりした速度で、しかも疲労困ぱいの様子で
通り過ぎていくのを、不安と焦りで見守るしゅんすけとまりこさん。

そして・・・。

来ました。彼女が橋の向こうの起伏から姿を現しました。

声を掛けるしゅんすけの声もいつになく強い声になっていたけど、
彼女の反応は今ひとつ。
やはり極度の疲労と脚の痛さのうえに、この長い上り坂は堪えたようだ。
しゅんすけは思わず駆け出して、彼女を追い抜き、さらに声援を送る。
何とか笑顔で返してくれた彼女でしたが、足取りの重さは残したまま、
他のランナーに紛れて行ってしまいました。

※彼女を発見。

※あと一息だ!頑張れ!・・・疲れてる。

しゅんすけとまりこさんの追跡劇もここで一旦ひと区切り。
豊洲まで歩いて(結構距離あったなー)ゆりかもめに乗り、
国際展示場へ向かいました。

ネット追跡ツールは、ずっと「調整中です」のままでしたが、
ここに来てなぜか復活。
35キロ過ぎまでの彼女のタイムが一気に表示されました。いやホント使えねー。
まだ、ゴールタイムは出ていないけど、たぶん今現在は既にゴールしたハズ。
ゆりかもめに乗って、国際展示場を目指すしゅんすけとまりこさんでしたが、
ここで一抹の不安。人が多すぎる。
ホノルルの時とは違い、今回は観客もかなりの多さでした。
家族とか友達が出場するっていうんで、応援に駆けつけた人たちが
みんな有明に集中しているかのようでした。
さて、ここでゴールした彼女をどうやって探そうかと、
とりあえず彼女からの電話を待つことにしました。
しかし、彼女からの電話は一向にかかってきませんでした。
しゅんすけもまりこさんも長い追跡劇を経て疲労していたけど、
ホノルルでは、ゴール直後からしばらく動くことすらできなかった彼女だけに
心配が募るばかりでした。

たぶん彼女がゴールしてから1時間近く経った頃、彼女への電話がやっと繋がりました。
意外にも元気そう。どうも着替えをするために相当時間がかかってしまったそうな。
確かに、ランナー控えスペースは、展示場を丸ごと使う広さだったようでしたが、
係員曰く「男性用とか女性用とかありませんから」(!)って言うんで、
そりゃ女性は着替えにくいわなって妙に納得。
疲労困ぱいな彼女でしたが、ゴールの喜びをひしひしと感じているようでした。

「ゴールしたら渡して欲しい」と言われていたオレンジジュースを手渡す。
彼女はそれをとても美味そうに飲むのでした。

後日談→
ちょっと後になってから、彼女のツテでいただいた写真を載せておきます。
 

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