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2008年4月27日(日)チャレンジ富士五湖〜72キロの先に見えたものとは

もともと一人で参加する予定だったさきこの初めてのウルトラマラソン。フルマラソン42.195キロを大きく上回る距離を走るレースへの出場を口にしたのは、某ランニングクラブの新年会の席上だったそうな。そこで賛同したさきこの男女のランニング仲間たちが、この日河口湖に集結したわけである。いや、しゅんすけに言わせれば、42キロでさえ尋常な距離でないのに72キロなんてホント正気の沙汰じゃないよね。そんなのに10を下らない仲間が集まり、さらにその応援に10を下らない仲間が集まるなんて、ホント彼らを突き動かすランニング・ハイなる脳内物質ってどんだけ気持ちいい物質なんだろうね。
しゅんすけがさきこの仲間たちのイベントに参加するのは初めてであったが、既に自転車練習会などでお会いした方が少なくなかったので、なかなか楽しめた。

今回は、しゅんすけの自転車からの視点でさきこの人生最大の挑戦の報告をする。

前日の土曜日は酷い天気だった。ホントは土曜の遅くに現地に到着する予定だったのだけど、調整によってしゅんすけも土曜に参加することになったので、せっかくだから自転車組の練習に参加することにした。当初は50キロ近く遠征して河口湖や西湖や山中湖辺りまで周回する予定だったそうだけど、あまりの寒さと悪天候のため、とりあえず河口湖から西湖に向かうことにした。この自転車組のメンバーは翌日のウルトラマラソンを自転車で追いかけつつ応援することにしていたので、コースの下見は重要であった。特に下見しておきたかったのが、河口湖から西湖へ向かう長い上り坂。これは以前クルマでも何度か通ったけど、クルマでさえ苦しい上り坂なので、ぜひ自転車で練習しておきたかったし、ここでの練習が来月出場予定の佐渡ロングライドに繋がっていくわけである。
小雨が降る中、レンタカーから自転車を出す。実はさきこの自転車も積んできたのだけど、翌日のレースを考慮してこの日の練習には参加しないことにした。しゅんすけと自転車組のメンバーは走り出した。

走り出してすぐ分かったことだけど、サクラが咲いている。横浜の方では既に葉桜の様相なんだけど、やはり寒いから開花が遅いんだろうか。天気が残念だったけど、キレイなサクラにココロ癒したのである。すると、すぐに西湖の方角を示す道路標識があって、西湖への道を指し示していた。なんだ、結構距離があるのかと思ったら、西湖に向かう道にもう着いちゃった・・・って、これが最大の難所なのである。
まっすぐ伸びる坂道。この山の先に西湖があるわけだけど、いや、分かっちゃいたけど実際に目の前にすると圧巻である。こりゃ明日は何人のランナーがココで心手折られるのだろうかと余計な心配までしてしまったよ。踏み込むペダルが重くなる。フロントのギアをインナーに入れて一番軽くしてもまだ足りず、ふーふー言って登った。いや、こりゃ地獄の坂だわ、いや、明日走るランナーにとっては、地獄の一丁目に過ぎないか。
悪天候も気温の低さも一向に回復しないので、自転車組の練習は早々に終了。実際17キロ程度しか走っていない。これで明日の72キロ、来月の130キロが走れるのだろうか。それにしても、しゅんすけの体力の衰えは無視できない状況である。いや、自転車にしてみれば17キロなんて大した距離じゃないのに、かなりバテてしまった。信号待ちがあったりして、インターバルが取れるいつものサイクリングと違い、ほとんど信号がないので、17キロを連続して踏み倒した。ゴールデンウイークとは言え悪天候の土曜日に西湖を走るクルマも少なく、道路をほとんど貸切状態で苦しくも楽しめたのであった。


※西湖を周回する道路に咲くサクラがキレイだった。

その後レースに参加するランニングクラブのメンバーと合流して、レースの受付をしたり前夜祭なぞに出たりして、宿泊のために某社所有の保養所に向かった。(こんな立派な保養所があるからしゅんすけの会社の営業は某社からお仕事をいただけなかったりするんだろうな)
夕方から本降りになった雨は、さらにその勢いを増していて、天気予報のとおりホントに明日は晴れるのだろうか?と一抹の不安を抱きつつ、レースの応援に駆けつけたメンバーは遅くまで酒を飲んだりで楽しく過ごしたのであった。

翌朝、5時起床。
雨は降ってなかったけど霧が出たりしていて、微妙な空模様。やはり天気は回復しなかったか・・・と諦めた時、霧と雲の隙間から小さな青空が見えた。こ、これはもしかしたら晴れるかもしれない。階下には既に出撃準備万端のさきこたち出場メンバーが朝食のおにぎりを食べていた。


※出発直前のさきこ。

先週の通勤途上で足首を捻ってしまったさきこだけど、体調の方はまずまずな感じである。果たして今日はどんな走りを見せてくれるのか。メンバーはクルマに分乗してスタート会場へ向かったのであった。
深い霧が立ち込める会場には、遅咲きのサクラが盛りを迎えていた。この辺のサクラは「富士桜」と言うそうで、花が下向きに咲く、梅にも似た可憐なサクラである。このサクラに囲まれるように出場ランナーがスタートを待っていた。

 


※スタート直前の記念写真。まだ霧が濃い。

ランナーは何時間かけて同じ場所に戻ってくるのだろうか。1キロ当たり7分だとしても8時間以上かかる計算である。ホントに大丈夫だろうか。不安と期待が徐々に高まり、午前8時、ついにスタートの号砲が鳴り響いた。

 
※ついにスタート!

走り出すランナーたち。目の前をどどどどーっと駆け抜けて・・・って、あ、もう終わりか。
いや、今まで観戦してきたレースだと、スタートから最後尾が出て行くまで相当時間がかかっていたんだけど、今回のレースはほとんど1分程度で全ランナーが出て行った感じである。つまりそれだけこのレースの出場者は少ないわけで、つまりそれだけ過酷だということである。果たして何時間でこのスタート地点(=ゴール地点)に戻ってこられるだろうか。


※富士桜、か、可憐だ・・・。

・・・さて、スタート地点にポツンと残されたしゅんすけ。これからどうしようか。誰もいなくなったスタート地点に佇み、一息ついた。応援組の方がスタート地点に集結するのはもう少し後である。それまでの間、自転車を組み立てたり、ちょっと走ってみたりして時間を潰したんだけど、なかなか集まってこない。おいおいなんか時間かかりすぎてないか?早くさきこを追いかけたいのに、この悠長さはなんだ?
やっと集まったかと思えば、みんなで雑談したりしてなかなか出発しない。ランナーがスタートして1時間、既に10キロ近くを走っているだろう頃になってやっと応援の自転車組の4人がスタートしたのだった。

まずは河口湖の西岸でランナーを捕らえるべく会場を後にする。しゅんすけは愛車のこてつ号のペダルを踏み込んだ・・・って、あれれーっ、スゴい下り坂である。分岐や交差点のないまっすぐな下り坂を、自転車は駆け下りていく。こ、これは、気持ちいいわぁぁぁぁー!
・・・結局丸々4キロを下ってきた。いや、気持ち良かったわ。朝の森を駆け抜ける風が冷たくも心地よかった。完全に晴れ上がった中、木々の隙間から差し込む陽光がきらきらしていてとてもキレイであった。後でこの分を上ってこないと戻れないんだけどね・・・。

下り切ってしばらく走ると、どこかで見た景色だと気づく。それが去年の9月に走った富士山周回サイクリングのコースだと分かって、ちょっと感慨深くなった。あの時はこの道をひーひー言って走ったんだよな。
河口湖へ向かう道に折れると、徐々にランナーの数が多くなってくる。今回のレースは一般のレースのように道路の交通規制はなくて、ランナーは主に歩道を走ることになっている。「レースやってます」ってよりも、「集団でランニングしてます」って感じに近い。その脇の車道を応援の自転車組4台の自転車が駆け抜けていく。
河口湖に到着し、左周りに河口湖を周回するランナーと別れて右回りに周回する道に入ったんだけど、この道沿いで大変キレイなサクラに出会った。満開のサクラからはらはらと花びらが散ってまさに桜吹雪の中を自転車が駆け抜ける。いやー、これだよ、これがやりたかった。そして極めつけに、サクラの向こうに富士山が現れた。
んもう非の打ち所のない素晴らしい景色、まさに日本の原風景を見た!


※サクラ越しに富士。う〜ん、電線が邪魔。

前日に練習したコースに合流し、西湖への分岐を超えてしばらく行ったところで、応援のクルマ組と合流。ランナーを待った。何人かの仲間が通り過ぎ応援した後に、ついにさきこが現れた。まだ元気そうである。


※河口湖に現れたさきこ。まだ元気そう。

その後、来た道を西湖の分岐まで戻り、前日と同様西湖に向けて坂を上り始めた。ランナーを応援しているつもりが応援されてる感じで坂道を登っていく。気合を入れなければ!この坂をクリアできずに未知の佐渡を走れるかぁ!?


※ずどーんってな感じに坂道が目の前に現れた!

西湖はしゅんすけが去年、一昨年とロードレースに出場したコースがあるんだけど、いや、この湖は湖岸沿いの道がとてもいい感じである。ホント、この湖は好きである。
しばらく湖岸沿いの道を走っていると、さっき応援して見送ったさきこに追いついた。たぶん20キロそこそこだろう。体調も問題なさそうである。

 
※西湖を行く。さきこの向こうに富士山が少し見える。

※西湖の向こうの富士山をバックに。

そんなさきこを見送って、次なる湖へ向かう。精進湖である。ここからまた去年走った富士山周回の道になり、しゅんすけの記憶を刺激する。西湖から精進湖へ向かう長い長い下り坂。去年はここで最後尾を走る運営車両に追いつかれてしまったんだっけな。今回は温かい陽光の下、スゴいスピードで駆け下りていく。今年こそ絶対に走り通すぞっとココロに誓った。

精進湖を見送り、本栖湖へ向かう中、どうも自転車の走りがおかしい。疲れてきたからなのか、スピードが出なくなってきた・・・っていうか、おかしい、緩やかな下り坂になっても、スピードが上がらないどころか、徐々に遅くなってきている。疲労のせいで、ペダルが重くなり、さらに上り坂なのに下り坂と錯覚するようになったか。日本の秘境・青木ヶ原樹海の近くだからな、重力異常地帯かもしれん・・・などとしゅんすけを襲うオカルティックな現象に首を傾げつつ、本栖湖に到着。やっと半分である。ふと、後輪のブレーキを見たら、タイヤを挟むブレーキの中心がズレていて若干ブレーキがかかり気味になっていた。そりゃスピードも出ないわけだよ。
(そこでふと思いついた。去年の富士山周回でも、途中から全然スピードが出なくなって、一番軽いギアで時速20キロに満たない速度で走っていたけど、あれもそういう理由があったのかも知れん。極度の疲労のせいかもだけど)

本栖湖で食事をして、ランナーを待つ。
何人かが目の前のコースを走り抜けるので、応援のために店を飛び出していくので、傍から見ると無銭飲食で逃亡する人みたいだっただろうな。
そして現れたさきこ。まさに中間地点まで来たわけである。

フルマラソンには及ばないけど、この時点で既に30キロ以上を走り倒しているにもかかわらず、思いのほか元気・・・ってか、いつものランニング練習くらいの印象である。うん、このまま行けそうな感じで安心した。

 

 
※本栖湖のエイドステーション。30キロを超えてもまだまだ元気なさきこ。
※しゅんすけも撮ってもらった。

さきこを見送って、しばらく他のランナーを応援したりして、再び自転車にまたがった・・・と思ったら気が付いた。さっき下ってきた坂を上らにゃイカンのか?!いや、この長い坂はキツいわーと思いつつ、これくらい上れないと未知の佐渡島コースは走れないと思い、気合とともにペダルを踏み込んだ。坂を超えると再び西湖である。往路とは別のルートで西湖を巡るんだけど、この道がしゅんすけは大好きである。湖岸に沿ってくねくねする道は、ランニングでも気持ちいいんだから自転車ならなお気持ちいい。
ホントはこの辺でさきこを応援したかったんだけど、先行する他のランナーを応援するためにこのまま河口湖まで突っ切ることにした。西湖から河口湖へ向かう急勾配は往路で苦労した分、復路では物凄いスピードになる。まっすぐ下る道なので、ギアをマックスにしたら時速60キロ超まで出た。今までで最高速である。


※精進湖から西湖に向かう途中の長い坂道。

※その坂道を駆け上るさきこ。苦しそう。
 
※西湖沿岸を走る自転車、すっごく気持ちいい!

結局一番先頭を走るランナーを見つけたのは河口湖から山中湖へ向かう道中。ここからコースを逆走して応援するよりも、このままゴールまで行っちゃってゴール地点でみんなを待つことになった。
ゴールへ向かう道中に気が付いた。一番最初に相当長い下り坂があったけど、今度はそれを上らないといけない。さっきの精進湖・西湖間の坂とは比べ物にならない傾斜と距離だろうと恐々としていたら、それは唐突に始まった。往路とは違うルートを走っていたら、ちょっとした傾斜があって、すぐ乗り越えるだろうと思ってたら、思いのほか延々と続き、それどころか傾斜が次第にキツくなり、気が付くとそれが最後の上り坂だった。緩やかに右へ左へ蛇行した坂だから、「あの右蛇行の向こうが平坦に見える」とか疲労による幻覚に苛まれつつ、フーフー言いながら上る。ランナーの方はさすがに60キロ以上走り通した後に現れた長い急傾斜に多くが戦意喪失で歩いてしまうランナーばかりだった。そりゃそうだ、残り数キロの中で最後の力を振り絞って走ってきたランナーの目の前に長い坂道が現れれば、たとえ分かっていたとしてもキツいものがある。そんな歩くランナーとほとんど変わらない速度でゆっくりゆっくり上る。
ふと見上げると木々に囲まれた道の向こうに白い雪に覆われた富士山が聳えていた。こうして坂道を上りつつ見上げる富士山には圧巻である。富士山の1合目辺りを登ってんじゃないか、コレ。これまでにない疲労感に堪らず、自転車を放り出して休憩してしまった。もう汗びっしょりだった。

 
※最後の凄い坂道。嘲笑うかのように現れた富士。

長い長い坂道との格闘の末、ついに坂道を上り切り、ゴールまで今度は若干の下り坂。風を切って走り、汗が急速に乾いていくのが気持ち良かった。そしてついにゴール。いやーキツかったわー・・・って安心する間もなく、携帯電話のGPS機能でさきこの位置情報を取得すると、現在河口湖を抜けたところである。つまり長い坂道の目前であった。
そこで、しゅんすけは駐車してあるクルマに戻り、急いで自転車を分解してクルマに搭載。着替えをしてクルマにエンジンをかける。さきこを応援するのに、自転車でさっきの坂道を下って再び上ってくるのは体力的に不可能なので、クルマで行って応援することにした。
クルマでさっき走ってきた道を逆走して坂道を下る。途中仲間のランナーの方とすれ違ったりして応援しつつ、さきこを探す。すると歩いているランナーたちの向こうからさきこが現れた。

さきこは走っていた。ランナーたちが堪らず歩いてしまう中、走って坂道を上っていたのだ。思わず応援にも気合が入る。クルマに乗り込み、少し高い位置までクルマを進めてさきこを待つ。さらに傾斜がキツくなる中、現れたさきこはまだ走っていた。おおーっ、割とベテランチックなランナーでさえも歩いちゃってるこの辺りで、まだ走っているのはホントにわずか。ホント、スッゲー!!!

 
※坂を駆け上るさきこ。もはや幾ばくの余力もなしの状態、頑張れっ!

その後、ゴールまで行こうとクルマを走らせたんだけど、なぜかクルマが渋滞して全然進まず、イライラするしゅんすけの脇を、さきこが走り抜いていってしまった。ホントなんでこんな山奥で渋滞が?!
異常に時間をかけてゴール会場に辿り着いたら、まさにさきこが会場に入っていく直前だった。わー!、さきこのゴールが見れないかもしれーん。急いで会場から少し離れた駐車場にクルマを止めて、走って会場に向かう。1日走り通したしゅんすけの脚は、思い切り走れるほど疲労回復してなくて、なんか変な走り方だったけど、ゴール会場でさきこが競技場のトラックを周回するのに間に合った。
声をかけると元気に返してくれた。おおっ、元気だ!頑張れ!あと少し!

そしてついにゴール!
72キロ、さきこは一度も歩かずに走り切った!
さすがにさきこも感極まって涙がこぼれていた。朝8時にスタートして、9時間20分38秒。72キロを一度も歩かず走り通したのだ。いや、ホント大したものだ。ハイパー・アイアン・フットの面目躍如である!
意外にもレース後のさきこの足取りはしっかりしていたな。(少なくとも満身創痍でゴールしたハワイ・ホノルルマラソンよりはしっかり歩いていた)
一通り仲間のランナーのゴールを見守って、しゅんすけたちは会場を後にしたのだ。フルマラソン完走を目標に走り続けてきたさきこが、フルマラソンを超えてウルトラマラソンを制覇したのだ。まさにただのランナーからウルトラランナーになった瞬間であった。

※トラックを走るさきこ、ゴールまで100メートル!

※おおっ、この期に及んでもココまで元気!

※感動のゴール!!!

レースが終わり、会場がだんだん暗くなってくる。まさに1日がかりのレースであった。
ランナーも応援組もクルマに乗り込んで帰途に就く。72キロを走破したさきこは元より、これと同じ距離を走ったしゅんすけも相当疲労していて、とにかく早く帰りたかった。レンタカーのカーナビは、富士五湖道路を大月まで出て、中央道から新宿、首都高を経て帰宅する道が一番空いていると言っていて、本能的には「ありえねー」って感じだったんだけど、もはや判断できるほど体力が残ってなくて、カーナビの言うルートを信じて走り出したんだけど、これが大失敗。んもう眠くて眠くて、何度が意識が遠のき、おおっ川の向こうで手を振るおばあちゃんとまろしゃん(猫)の姿が見える!って幻覚に苛まれつつ、もはやこれまでと首都高・平和島のパーキングエリアでしばし眠りについた。

ホント大変な旅であった。さきこの底知れぬ能力を垣間見た感じであった。ベテランランナーさえ歩いてしまうコースを走り通すなんて・・・と、クルマの助手席ですーすー眠るさきこにご苦労様な宵なのであった。

おわり。