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2009年9月26日(土)〜27日(日)大島サイクリング

※今回のコースはこちら。

今年はサイクリングの機会がかなり多い。春にはしまなみ街道をサイクリングしたし、9月には富士山周回のイベントは恒例としても自宅から箱根を抜けて沼津への単独チャレンジ(ヒトナツの爆走)もあった。そして今回は伊豆大島を周回するサイクリングの企画である。ヒトナツの爆走の翌々日という強行軍だったけど、文字通り大きな島を堪能することができた。

メンバーは10名。伊豆大島への玄関口となる久里浜港への集合方法は、JRや京急を使う人や自宅から自走で来る人など様々だった。しゅんすけとさきこは前々日の爆走での筋肉疲労があったので、京急で久里浜港に行くことにした。
自宅から最寄り駅まで自転車で行き、輪行体勢を調えて京急に乗車、京急久里浜で再度自転車に組み立てて久里浜港まで行き、ここで高速ジェット船に乗るためにもう一度輪行体勢にする。これが非常に面倒であった。以前佐渡島に行った時のように電車を降りたら港まではバスかなんかで輪行袋に入れたまま移動しても良かったかもね。
9時、高速ジェット船が久里浜の岸壁を離れた。しゅんすけは大島も初めてだけど、この船に乗るのは初めてである。大学生の頃、アルバイトで非常な重労働を強いられた久里浜の火力発電所を横目に見ながら船はエンジンの轟音と共に港を離れ、東京湾を一路南下。この船はいわば海の新幹線のようなもので、運航中はシートベルトを締めて座っていなければならず、窓は開かないし、船上に出て海風に吹かれるという風情ではなかった。これだから大島に早く到着できるというわけで、乗船から1時間で伊豆大島に到着した。これは早い。
晴天の伊豆大島は風が心地よく吹いていた。島の稜線が何となくハワイ島を彷彿とさせる。同じビッグアイランドの名を持つ彼の島とは姉妹都市のような関係だそうで、そう言えばたしかにハワイ島も火山島だったな。
 
※(左)久里浜港で輪行の準備をするさきこ。(右)バックの船が高速ジェット船。

海はキレイだし風も心地いい晴天、海の向こうにはうっすらと陸地が見えて、あれは伊豆半島だそうである。空気が澄んでいたりするとこの向こうに富士山が見えたりするらしい。そりゃ絶景だわ。
自転車を組み立てたら早速サイクリング開始である。
この日は島を反時計回りで周回する。
 
※(左)伊豆大島に到着。(右)水平線にぼんやり伊豆半島が見える。
 
※(左)みんなで自転車を組み立てる。(右)足湯があった・・・ほ。

※伊豆大島のサイクリングがスタートする。

走り始めるとしばらくは小さな上り坂があったり、椿の木が生い茂っていてなかなか海が見られなかったりと「島」をサイクリングしている感じは薄かったんだけど、数キロ進むといきなり長い下り坂が現われ、その道の先には青い海が見えた。おお、こんな景色を求めてたよ!爽快なダウンヒル。左手には壮大な風格の三原山。あの山頂の向こうは噴火口である。なんかダイヤモンドヘッドを彷彿とさせる景色である。
 
※大島の道を進む。
 
※雄大な景色である。

さらに進むと地層切断面と呼ばれる露出した地層の崖が続く。これはいわゆる観光名所ってヤツね。海側からは向こうに三宅島が見えたりした。う〜ん、なんか「島」に来たなーって感じである。見慣れない黒い砂浜にも異世界的感慨を抱く。いいねー島は。
昼前には大島南端の波浮港に到着。
演歌の歌詞にも出てくる港だけど、想像していたよりもかなりこぢんまりした港であった。ここで美味しいコロッケをパクついてから少し走ったところで寿司を食べることにした。2日前に沼津で寿司を食べているしゅんすけにとっては、ま、普通の寿司って感じだったかな。実際は普通レベル以上の美味しさなんだろうけどね。うん、近海モノは沼津の方が格段に美味かったと思う。
 
※(左)地層切断面。バームクーヘンとは言い得て妙。(右)海の向こうに三宅島?が見える。
 
※(左)さらに進む。(右)黒い海岸、この直後に水浸し。
 
※波浮港。コロッケ美味かった。

※高台から見下ろす波浮港。風情があるなあ。

昼食を終えて、再び走り出す。
筆島が見える海岸では絶景に遭遇することになった。大島にこんな景色があったとは思えないほど雄大な景色。実はしゅんすけはJRの駅で「日本とは思えない景色がそこにある」みたいなコピーのポスターで雄大な海岸の写真を見ていて、その写真はこの筆島の景色とは異なるのだけど、でも「日本とは思えない景色」がまさにしゅんすけの眼前にあった。この景色はスゴい。

※向こうに筆島が見える。

さてここからしゅんすけたちは坂道に対峙することになる。
事前にいろんなサイトでコースマップを見ていたので分かってはいた。某AL○S社のマップでは距離にして5キロ程度、平均斜度7%程度の坂である。2日前に箱根の山を越えたしゅんすけにとってはさほどキツい坂ではないと思われた・・・けど、やはり疲労は残っていたようで、この坂にはホントかなり苦労した。坂の斜度にも苦しめられたけど、初めて走る坂だけに坂がどこまで続くか分からず、坂の頂上に見えたアスファルトの地平線が実は別の坂に続いていたりして、えーまだ続くのー?という精神的ダメージが大きかったね。もう終わりかと思って角を曲がるとさらに坂道が延々と延びているのを見て、小さな悲鳴をあげていたのがだんだん笑いに変わってくるから面白い。もはや冗談としか思えないほど延々と続く坂であった。
こうしてやっと頂上らしき場所に到着。それまで何度も騙されてきたので、ここが頂上かどうか半信半疑なんだよね。とりあえず休憩である。
波浮港にいた時、見上げた山の天辺に鉄塔が建っていて、たぶん電波塔かなんかだと思ったのだけど、遠くの山頂にあるこの鉄塔を真横に見るほどの高さまで上るとは、夢にも思ってなかったわ。
しかも地獄の登板はこれで終わりではなかったのである。
まゆみさんが企画していた三原山への道。それは「月と砂漠ライン」と言うそうで、途中までは自転車でも行けるようだった。三原山の噴火口には遠いけど、巨大な火山の一端を見てみたかったそうな。しかしそこへ至る道はさらなる急勾配の坂道である。鬱蒼と茂ったジャングルの中をクルマ1台分くらいの幅しかない道が延びていた。見るからに急勾配。こ、これ、行くの・・・?
 
※(左)坂道の頂上付近、でもこの後更なる試練が。(右)地獄の登板を知らずに休憩。

おお、まさにロードオブザリングの世界。しゅんすけたちは目的の滅びの山(三原山)を目指して急勾配をごりごり上る。自転車で。もはやまっすぐ進まない。ギアは一番軽いポジションのハズなのにペダルがとても重い。これは箱根を越えるほどの急勾配である。もはや自転車で走る道ではないね。
腰に不安のあるさきこはついに自転車を降りて押して歩くことにしたようだ。
こうして1時間ほど進んだろうか。登山口の駐車場が見えてきて、メンバーがしゅんすけを迎えてくれた。いや、これはしんどい・・・。
しかしこれで終わらない。黒い礫漠を歩いて山頂を目指す・・・って、いや、しゅんすけはサイクリングに来たんだけどなーと根本的疑問が頭を過ぎったその時、眼前の景色に息を飲んだ。茫漠とした黒く広大な大地に太陽が照りつけていた。脳内の視覚的スケール感が一気に狂っていく感じのダイナミズム。陽光に黒光りする稜線の向こうにはキラキラ光る海が見え、視線を移すと山の裾を伝うように植物が次第に増えていき、先ほどまで走っていたジャングルを経てその先には海が見えている。そして視線の若干下方に雲が漂う・・・って、雲の上まで来ちゃったのか?!いや、これ、本当に日本の光景なのか。久里浜から船で1時間足らずの島の光景なのか。
しゅんすけは伊豆大島をナメてたね。地図でしか知らないその島は、周囲50キロ程度で天気予報のテレビ番組などで関東地方の天気を読み上げる最後にちょこっと耳にし、台風中継などで物凄い高波をバックにリポーターの傘が飛ばされるのが、ほとんどしゅんすけの大島の認識だった。周回コース40キロなんて、あっという間に終わると思ってた。あっという間過ぎて時間が余ってまったりしちゃったら嫌だなーとすら考えていた。しかし、先ほどの筆島の風景、地獄坂に加えて、三原山のこの景色である。しゅんすけの伊豆大島への考えはまさにコペルニクス的転回をみた。侮りがたし、伊豆大島。
それにしてもサイクリングから思わぬ登山に展開して、まさか雲の上まで来ちゃうとはね。登山では10分程度しか上ってないので、その行程のほとんどを自転車でこいで来たことになるわけで、海上では雲の高さが比較的低くなるとは言え、我ながらスゴいことである。
 
※なぜか登山の光景になっている。何か、おかしい・・・。
 
※(左)もはや日本とは思えない光景が目の前に。
(右)雲の上まで来ちゃったみたい。

※再び走り出す。

ここからまた大島を周回する道路へ戻る。この先はずっと下り坂になり、かなり爽快であった。しかし少々暗くなってきていたので、あまりスピードは出せなかったな。残念なのはこの時点で日没してしまったことである。島の東側を走っていたので、空が赤くなるのをただ見上げるだけだった。この日の天気なら海に沈む夕陽が見られたかもしれないと思うと残念でならない。
下り坂が終わり、公園で休憩。ずっとジャングルの中の一本道を走ってきたので、途中で水分の追加購入がまったくできなかったから、自動販売機が並んでいるのを見て安堵した。あれだけの坂で、あれだけ汗だくになったのに、水分が枯渇しなかったのは良かったけど、こうしてどこでも飲み物が買える環境のありがたさを実感した。
それから程なくして宿に到着。1日走ってきた自転車を置いてこの日のサイクリングは終了。疲れたわ・・・。
宿で美味しい夕食を食べて、仲間と飲み会をして、23時には眠くなった。この日朝5時起きで、激烈サイクリングだったわけだから無理もないのだった。

翌朝6時、起床すると同室で寝ていたハズの男性メンバーが3人いなくなっていた。布団がもぬけの殻。室内にはオレンジ色の陽差しが差し込んでおり、日の出直後の時間である。どうも皆、早朝ランニングに出かけたようである。惰眠を貪っていたしゅんすけが彼らに敵わないハズである。
寝癖もそのままに部屋を出て立て掛けてあった自転車にまたがって寝ぼけたまま走らせた。早朝の冷たい空気が頬に気持ちいい。緩やかな坂を下ると海岸に出た。ちょっと寒かったけど気持ち良かったなー。この辺はダイビングスポットのようで、朝食前のダイビングを楽しむ観光客が大勢いて、ダイビングの準備などしていた。

※海岸の朝の風景。

朝食を食べて支度を調えたら、早速サイクリングに出発である。
この日は元町港までの数キロをゆっくり進む。早朝ランニングをして元町まで行ってきたという方の話しだとちょっと上って以降は緩やかな下り坂がずっと続くそうである。
ジャングルのような森はもはや亜熱帯の植生である。以前に小笠原で見たような森の景色である。東京都でありながら伊豆半島の脇にある島なのに、南国風情というのがなんかいいよね。大島空港の隣の売店でアイスなぞ食べつつ休憩したり、海岸で記念写真を撮ったりしてゆっくり進む。道は多少のアップダウンがあるものの、上りはさほど頑張らなくても上れたし、下りは爽快感を楽しめた。うん、しゅんすけも他のメンバーも今回の大島のサイクリングは終始こんな感じだと思っていた。海風を感じながら右手に海、左手に山を見ながら進む楽しいサイクリングだと思っていたけど、まさか激坂を汗だくでごりごり上る過酷なサイクリングだとは思ってなかったよ。苦しさを差し引いてもお釣りが来るようないい景色が見られたから、それはそれで良かったけどさ。
 
※海の風景、山の風景。山の植生が亜熱帯的だ。
 


※こういうサイクリングをしたかったなーと思わせる西側のサイクリングロード。

視線の先に元町港の建物が見えてきた。
しゅんすけのサイクリングの終着点である。いや長い旅だった。たかが50キロ程度のサイクリングにここまで苦しめられるとはね。
元町港でくさやを食べたり、煮魚を食べたりして過ごし、ちょっと時間的余裕があったので、溶岩流の痕を見に行ったりした。(溶岩流の痕が見られる場所までまた坂道を上るハメになってゲンナリした)
※くさやは噂に聞くほど臭くなく、それどころかとても美味しい臭いであった。お袋さんはしゅんすけが昔からくさやに拒否反応を示さなかったと言っていたがしゅんすけはそれを覚えてなくて、新鮮な体験であった。

※伊豆大島はかのゴジラの生まれ故郷なのだそうな。
ゴジラやら貞○やらを生んだ伊豆大島、恐ろしすぎる・・・。
 
※(左)島で見たネコ。(左)溶岩流の痕。ここまで来るのに坂がキツかった・・・。

船の時間が近づいてきた。
大島ともこれでお別れである。緩いサイクリングコースかとタカをくくってたらとんでもないハメに遭った。でも景色は良かったし、海風は気持ちいいし、路面は大半は滑らかなアスファルトで走りやすかったし、いいサイクリングができたと思う。それにしても、港や街中の売店は観光客にガッツいて来なくていい雰囲気だったな。某江○島なんかだと、観光客が店先を覗いただけで「買うまで逃がさない」的オーラをびんびんに感じるんだけど、ここではそんなことはまったくなくて、お土産屋のおばちゃんと会話しながら買い物を楽しんだのは良かったかな。港の角にあった露店で、くさやを焼いてもらって食べたんだけど、おばちゃんと楽しく会話してたら「これサービスね」とモツ焼きをごちそうしてくれた。行きずりの観光客にオゴってくれるところに懐の深さというか、自信というか余裕を感じたね。観光が主産業になってる地方の街なんかでは、若者に迎合して今風の音楽をスピーカーでがんがんに鳴らして雰囲気を出してるんだかブチ壊してるんだか分からない光景を目にするけど、大島ではそういうのが一切ないところが非常に好印象であった。

高速ジェット船に乗船し、小さな窓から遠ざかる大島を見ながら、また来ようかなと思いながら、船に揺られてうたた寝するしゅんすけなのだった。

※さらば伊豆大島。