TOP>>>ヒトナツの爆走

2009年9月24日(木)ヒトナツの爆走

※今回のコースはこちら。

遅れてきたしゅんすけの夏休み。何か記憶に残ることをやりたいなーと思ってて思いついたのが、横浜の自宅から沼津までのサイクリングである。沼津には美味しい寿司屋があるのである。ここはひとつ、久し振りに寿司なぞ食べたいなと思ったわけである。ちなみにしゅんすけと沼津の関係はあえてここで書くこともないけど、いわばしゅんすけにとってはココロの故郷と言っても過言ではない街なのである。
ところで自宅から沼津までは距離にして120キロほどある。これほどのロングライドは先日のMt.FUJIエコサイクリングとか佐渡ロングライドでしか体験したことがない。そういうサイクルイベントではなく、単独行でのロングライドは初めてである。果たして無事に沼津の地を踏みしめることができるかどうか。
さて今回のコースは、湘南の海沿いを走る国道134号線で西を目指し、途中国道1号線を通って小田原に入り、ここから箱根駅伝5区として有名な急激な上り坂を走り、芦ノ湖を経てさらに国道1号線で三島をかすめて沼津へ至る道のりである。ちなみに今回は往路だけ、帰りは電車で帰ってくる。しゅんすけが沼津に単身赴任していた時に乗っていたある特定の時刻の東京行き東海道線は、車内がリクライニングシートになっていて非常に乗りやすい。自宅への帰省の際には重宝させていただいた電車である。帰りはこれで輪行して帰ってくることにした。

朝8時。
準備をして出発である。果たしてこの一歩が沼津に繋がっているのか一抹の不安があるけど、頑張って走ろう・・・っていきなり忘れ物。それも1回じゃ済まなくて、出発したものの何度か自宅と往復するハメになっちゃった。全然準備万端じゃなかった。
初めはしゅんすけがよく走る道である。鎌倉街道を南下して北鎌倉経由で鎌倉、由比ヶ浜へ出る。ここで国道134号線に乗って西に進路を取る。
天気は上々で、海がとてもキレイだった。しゅんすけが何かやろうとするといつも天気が邪魔をするのだけど、こういう日もあるんだね。稲村ヶ崎、江ノ島を抜けると、海沿いの道は単調な松林を左に見ながら続くことになる。きっとこれが退屈だろうと思って、自宅に引き返してウォークマンを持ってきたというのに、まったく退屈にならなかった。多少吹いている風は追い風で、楽にペダルをこいでも時速30キロが出てしまうようなハイペースで走ること自体が楽しかったし、しゅんすけのサイクルコンピュータの累計走行距離が4000キロのキリ番に迫ろうという時だったのだ。3000キロのキリ番は春先の三浦半島サイクリングだったから、半年ちょっとで1000キロを走破したことになる。そんなに自転車に乗ってる感覚はないんだけど、サイクルコンピュータに表示される距離と携帯電話のGPSアプリの距離表示がほとんど一致しているので、表示距離は信用できる数値なわけで、いやスゴいものだ。
 
※鎌倉由比ヶ浜、稲村ヶ崎の見慣れた風景。
 
※(左)湘南大橋まで来た。(右)累計走行距離が4000キロを越えた。

大磯辺りから国道1号線に入る。
この道はさきこが以前にウルトラマラソンの練習として、自宅から小田原までランニングした時に通った道でありなんか懐かしいね。見上げると道路標識に沼津までの距離が表示してあった。「沼津54キロ」・・・う〜ん、まだまだ先は長いなー。でも、追い風のおかげで小田原到着時刻は少し早くなりそうである。昼食を小田原で食べようと思っていたんだけど到着は11時過ぎになりそうである。
しゅんすけの体力的にはまだまだ充分であった。かなり早めなペースで時間的にも余裕があって箱根の山上りに挑めそうであった。

※「沼津54キロ」の道路標識。

11時過ぎに小田原に到着。自転車で来たのは2回目である。距離は55キロくらい。いや、よく走ってきたよ。昼食を食べて少し休憩する。これから挑む坂は、去年の年末に一度挑戦しているとは言え、箱根湯本のスタートだったから今回の方が体力的に不安である。
しかし、昼食を食べて店を出て、自転車のタイヤを何気なくチェックした時に新たに大きな不安が現われた。トラブル発生である。後輪のタイヤの空気が若干減り気味なのだ。しゅんすけは出発前に必ず空気圧をチェックする。しゅんすけがいくら頑張っても自転車のメンテが悪くては楽しいサイクリングにならないだけでなく、最悪サイクリングを中断するようなことになりかねないからである。今回の道程では、途中でリタイヤしても公共交通機関が少なくて帰れない場所もあるわけで、事前に充分チェックしたハズだった。しかしタイヤを指でぐっと押すと思いの外、反発力が弱い。これは空気が漏れている証拠かもしれない。パンクだったら走行不可能である。幸い予備のタイヤチューブを持ってきたからどこかで交換するかなーと思ってたら、うまい具合に自転車屋を発見。とりあえず軒先を貸してもらってチューブを交換した。
過去の経験からチューブを交換してもパンクが繰り返されることがあって、なぜだかよく分からないんだけど、その手のパンクだったりするとチューブの交換くらいでは事態は改善しないのだ。もしそうだったらマズい・・・そんな不安を抱えつつ、箱根へ向けて走り出した。
 
※(左)JR小田原駅である。(右)小田原城周辺。時間がなくて小田綿城は割愛。
 
※(左)見かけた自転車屋でタイヤチューブを交換する。(右)小田原市街をゆく。
沼津まで40キロ・・・。

小田原からしばらく走ると箱根湯本が見えてくる。
しゅんすけは過去に小田原までサイクリングに来ているし、箱根湯本から芦ノ湖までをランニングで走ったことがあるので、ちょうど小田原から箱根湯本までがぽっかり抜け落ちていたわけだけど、今回のサイクリングでその部分も走ることができた。なかなか起伏に富んだ道であった。
箱根湯本に到着。ついに箱根の玄関口まで来た。
ここからホントに勝負が始まるのだ・・・と決意を新たにして、タイヤの調子も悪化してないようだったので、先へ進むことにした。なぁに、年末にも上ったし先月も走ったし、大丈夫だろ。

いや、もう、全然、大丈夫、じゃ、なかった・・・。

最初の数キロで完全に疲弊してしまった。こ、こんなハズでは・・・と思うのだけど、やはり午前中に走ってきた自宅・小田原間の55キロが効いていたんだろう。なるべく体力を温存したつもりだったけど、そりゃ自転車こいで来たんだから疲れてないわけがない。
一度自転車を降りて休憩。ヘタりこんでいると、行き交うクルマたちに「行き倒れか?!」と思われるので、立ったまま呼吸を整える。しゅんすけはこういう時絶対に歩かないようにしている。坂道を自転車を押して歩いて上ってるとなんか坂道に負けちゃった気がするのだ。特に過去に上り切った坂道では絶対に歩かないと決めている。その場で休憩である。
それでもキツい。休憩して50メートルくらい走ってストップ、そして休憩って感じ。15キロくらいある芦ノ湖までの道のりを永遠に感じてしまう。夏合宿でランニングで下った時にその急な傾斜を見たから、気持ち的にガッツが抜けちゃったのかもしれない。その時の記事を読んでもらえば分かるけど、勾配10%だからね。もっと急勾配なトコロは13%くらいあるんじゃないかって思うよ。それを自転車で、しかも55キロを走ってきてから上るのは、少なくともしゅんすけには不可能なんじゃないかって気持ちがあったのかもしれない。だからかもしれないけど、この道中で一番キツい勾配の坂を上った以降は比較的気持ちが軽くなった。相変わらず呼吸は苦しいんだけど、楽な気持ちで坂に向き合えるようになった。とにかく箱根はさすが「天下の険」である。
 
※(左)箱根湯本駅。(右)キレイな清流が見える。

※登山鉄道の踏切。かなりキツい・・・。

山の上の方まで来ると、日陰の部分が少なくなって空が開けてくる。陽差しは西に傾き始めていた。陽差しを避けて顔を伏せてがりがり上っていると、視界の隅にガソリンスタンドの店先の片鱗が入ってきた。見覚えのあるこのガソリンスタンドは山の頂上付近にある。その唐突さに、はっとしたね。おおっついに上り切ったか!と。ここから若干坂を下ってもう一度上るとホントの頂上、国道1号線の最高地点である。やった、年末にしゅんすけは走り切った道を踏破できた。あぁ・・・坂道が終わった・・・。
ここから先は自転車では初めての道である。
坂道を下って芦ノ湖へ至る。その下りはランニングでさえ気持ちいい道だったけど、自転車で下りるとまた格別な爽快さである。山に囲まれた芦ノ湖は西日を浴びて金色に光っていた。しゅんすけの愛車・こてつ号はその光に向かって一気に駆け下りたのである。
うぉぉぉぉー!ツバサよ、あれが芦ノ湖だぁぁぁぁ!

※自分の脚で上ってきた3回目のこの標識。感動である。

芦ノ湖に到着。距離は自宅から80キロ余り。まあよくここまで来たものである。
しかし時刻は15時30分、時間がなかった。これから先、三島・沼津の道はしゅんすけもよく分からない。自転車はおろか、クルマでさえも通ったことのない箱根峠である。多少時間的に余裕をみた方がいいのだ。しかし、ここはひとつ箱根神社にお参りである。ランニングの時にはいただけなかった御朱印をいただく。これをいただくために小田原でノートを買っておいたのだ。
その後急いで箱根町まで行ったんだけど、そこにはコンビニがなく、これから再び山上りをしようというのにエネルギーを補給することができず、元箱根だったらコンビニがあったのに・・・って、しょうがないので、近くのお土産屋兼食堂でうどんを食べた。品川の立ち食い蕎麦の方が数段美味しいんだけど、贅沢を言っていられない。この先どんな坂があり、どのくらい続くのかは初めて体験するのだから。

※芦ノ湖で撮影。湖面がキラキラしてキレイである。

※箱根町での芦ノ湖の図。山の向こうに富士山が見える。

箱根峠の坂道もやはりキツかった。急勾配が一直線にのびている感じである。息も切れ切れで上る。しばらく行くと展望台みたいな場所があって、景色を楽しんでいる人がいた。そのまま通り過ぎるつもりだったけど、ちらっと見えたのが芦ノ湖だと分かって、覗いてみることにした。さっきまであの湖畔にいたのに、もうここまで上ってきたんだなーという感慨だった。
そしてさらにしばらく進むといろんな道が交錯するようになった。ターンパイクとか下田とかスカイラインとかそんな標識が出ていた。そして目前の道が地平線のように切れていた。これが箱根峠の頂上である。頑張ったことは頑張ったけど、意外にあっさりと頂上に来ちゃった感じである。

※箱根峠手前の展望台。芦ノ湖がキレイ。
 
※箱根峠の風景。

さて、ここからは下りである。
三島市街まで一気に下る。小田原から上ってきた分を全部返上する感じの下り坂である。地面を蹴って自転車が坂を下りていく・・・って、ちょ、ちょと、ちょっとこれはスゴい。まっすぐのびる坂道が延々に続く感じである。軽く50キロを越える坂道である。これはかなり怖い。ダウンヒルはそれまでの苦しいヒルクライムのご褒美なんだけど、これほどの急な坂道が続くとさすがにお腹いっぱいである。しかも目の前から陽差しが差して目が幻惑して道が見えなかったりするから神経を使うし、クルマ用の「スピード落とせ」の路面の起伏が自転車には大きなデコボコに感じられ、ハンドルが躍ってしまう。これは調子に乗って走ってたら絶対にコケるわ。慎重に慎重に丁寧に坂道を攻める。すると眼前にスッコーンと開けた景色。方角的には伊豆半島の中心線を見ている感じだったので海は見られなかったけど、どこまでも続くかのような抜けるような景色だった。そして視界に入ってきたのが富士山。箱根の山を越えて、裾野まではっきりと分かる姿が眼前に現われたのだ。こ、これは犯罪的に素晴らしい景色である。そっか、静岡のこの辺の人たちはこんな富士を毎度見ているのか、酷いわ。
それにしてもいい加減長いわ、この坂。神経使って下りているので精神的に疲れるし、陽差しのせいで路面が見えずおかげでハンドルをしっかりと握ってるから腕が痛くなってきた。
 
※(左)箱根峠の下り坂を見上げる。(右)下り側の景色。いい眺めだなー。

※出た!物凄いキレイな富士山!

※ズームアウトするとこんな感じ。

民家や商店やクルマが多くなってきた。坂道が緩やかになりそろそろペダルを踏まないと・・・という頃、既に17時を回っていた。しゅんすけがこのまま沼津に到達するのはほぼ間違いないだろう。ただし問題は夕陽に間に合うかどうかということである。箱根峠から沼津に抜けたことがなかったので、時間感覚が掴めない。疲れ切った脚を奮い立たせてペダルを踏み込んだ。果たして夕陽に間に合うのか、夕陽+駿河湾+富士山+自転車というベストショットは撮影できるのか。
しかし、三島から沼津までの道は結構距離があったようである。太陽がその最後の光をしゅんすけに当ててくれたのは沼津駅前の商店街だった。タイムアップである。
太陽を見ることができなくて残念だったけど、海に出てみることにした。久々の駿河湾。しかも今回は自分の自転車でやってきたのだ。箱根を越えてここまでやってきたのだ。感慨ヒトシオである。長い道のりはすべてこの駿河湾の景色に繋がっていたのである。愛鷹山越しに見る富士山もなんか懐かしいわ。
しゅんすけの旅は今まさに終結したのである。
 
※(左)沼津中心街で日没した感じ。遅かった・・・。
(右)夕陽が沈んだ後の沼津・千本松原の海岸。
久し振りだけど、相変わらずキレイだ。

かつて住んだこの街をいろいろ見て回った後、楽しみにしていたのが寿司である。
シルバーウイーク直後の平日で寿司屋はかなり空いていたので、美味しい寿司をたらふく食べた。今年はサンマが豊漁で、普通の寿司も美味しいし、火で炙ってある寿司も美味い。ネコって美味しいご飯なんかを「ニャウニャウ」言って食べるけど、一人で寿司屋に入って寿司を食うしゅんすけは美味い美味いと独り言を言ってた。ネコか。
20時24分、JRの駅に東京行きの東海道線が入ってきた。しゅんすけが会社を辞めて最後にこの電車に乗ってから4年以上が経過していたけど、電車はあの頃のままリクライニング式シートの電車だった。輪行体勢にした自転車を車両最後尾のシートの後ろに収納したら結構ぴったりだった。2席並んだシートのリクライニング度合いにはちょっと無理があるけど、こうして自転車を運ぶことが可能なのが分かった。
走り出した電車の車窓を眺める。暗い車窓の風景に時折外灯の光が通りすぎる。
こうしてしゅんすけは帰途に就いた。自分が成し遂げた偉業を思い返すにつけ、うたた寝しそうになる刹那、ある考えが頭を過ぎり自分で自分にびっくりした。
この調子なら5日間かけて500キロ先の京都まで行くこともできるかもね。・・・え?

※寿司がとっても美味しいわ。
 
※(左)沼津近くの駅。(右)車中の様子。