今年最も気合の入ったイベントMt.FUJIエコサイクリングに参加してきた。
去年の参加に続いて2回目の参加になったわけだけど、今年はとにかく「時間内に完走すること」が最大の目標。去年は残り15キロを残して朝霧高原で惜しくもタイムアップとなってしまい、回収バスへの乗車を拒否して自走でゴールしたものの、しゅんすけ的にはかなり悔いの残る結果になった。しゅんすけは今年、時間内に110キロを走破できるほど成長したのだろうか。去年の結果を受けて、しゅんすけは意識してロングライド、ヒルクライムに挑戦してきた。5月の佐渡ロングライドでは130キロを走破し、途中のZ坂でも「これで挫けていて篭坂が上れるかぁ?!」の気持ちで乗り切った。また夏の盛りに丹沢・ヤビツ峠を攻略。初心者は宮ヶ瀬湖側から攻略すべきところを、果敢にもいきなり南側の急坂から攻めてしまい、その急勾配振りに散々後悔したんだけど、佐渡島と同じく気持ちで乗り切ったのである。つまり今年経験した自転車に関するイベントは、すべてこの日に収斂していると言っても過言ではないわけである。果たしてこれまでの試練が今回のロングライドにどんな結果をもたらすか。
体力的な問題もそうだけど、より切実な問題として、天気が気がかりであった。
事前の天気予報は芳しくなく、ほとんど晴れは期待できなかった。富士山を周回するコースだから富士山を360度で見ることができると期待していたけど、それは難しそうであった。でも、せめて雨は避けたかった。以前の東京センチュリーライドでもヤビツ峠越えでも雨に降られて散々だった。ホント雨男の面目躍如というか名に恥じない大活躍だったんだけど、さすがに今年一番気合いの入っているイベントで雨は勘弁して欲しいと思うし、そもそも雨の中での110キロ走行はしゅんすけ的にはもうアウト。だから、雨が降ったら潔く中止と決めていた。ノーモア荒川、ノーモアヤビツである。だから水曜日くらいから天気予報を随時チェックしていたし、さきこの自転車としゅんすけの愛車のこてつ号を運搬するレンタカーもぎりぎりまで手配しないでいた。
そして前日、それまで降水確率70%を切らなかった天気予報が50%になり、気象庁の出す週間予報で月曜日の天気が「信頼度C」という微妙な状況になったのをきっかけに、あおき家のイベント参加にGOサインが出たのである。
前日に現地の会場でエントリー。コースガイドなぞ貰ってぺらぺら見てみると、去年よりも若干コースが変わっているようである。会場の盲導犬の育成センターには前日イベントの終わり辺りに到着したので、去年のように盲導犬やその子犬たちに会うこともできずに、期待していた抽選会も不発に終わり、この日は失意のうちに旅館に入ったのであった。
この旅館は、去年もお世話になったんだけど、食事が×××で、風呂も×××で、会場から5分程度の距離というロケーション以外にはメリットがない旅館。とは言え、去年より参加者が増えた今回のイベントで、会場の駐車場をゲットするためにはそれなりに早く駐車場にクルマを止めておく、つまり場所取りする必要があるから、どんなに×××でもやむを得ないのである。そんなわけで、今年も×××な食事を食べ、×××な風呂に入って、21時には床に就いたんだけど、その後電話がひっきりなしに鳴って、イベント直前のしゅんすけの心身を動揺させまくった。これはかなり恨めしい仕打ちであった。
加えて不安な点があった。さきこの体調である。
さきこは前週から腰痛に悩まされていた。それは週末になっても一向に解消せず、一定的にさきこを苛んでいた。これが今回のサイクリングでどう影響するだろうか。そんな不安な中で眠りに就いた。
夜中3時過ぎに起床して4時過ぎに会場近くの駐車場に向かう。道中は街灯もなくほとんど闇。すれ違うクルマもまったくなかったんだけど、駐車場に着くと、そこはほとんどクルマで埋め尽くされていた。夜のうちに会場に到着した人たちが、クルマに積んできた自転車を組み立てていた。しゅんすけは駐車場の残り少なくなったスペースに駐車。まだ当日受付が始まったばかりの時間なのに、この混みようはスゴい・・・っていうか、スタートまでまだ2時間近くあるのに、自転車を組み立ててどうしようというのか。しゅんすけとさきこは早めの朝食におにぎりをかじった。
そこへ某ランニングクラブで知り合った方が到着。彼らは前日に会場に到着しつつも、宿を御殿場(!)に取っていて、やっと到着したところだったんだけど、既に駐車場が満車になっていて、ちょっと離れた別の駐車場へ向かっていった。去年はさほど混雑しなかったけど、今年はどうも違うよう。自転車愛好者の数はどんどん増えているのである。そんな混み合う駐車場だけど、時折クルマのヘッドライトが辺りを照らしたり、室内灯が灯っていたりする以外は基本的には闇。漆黒に包まれていた。ふと見上げると漆黒の闇にだんだん目が慣れてきて、大きなオリオン座が見えた。星が見えているなーと思ったら、暗闇に慣れた視界に空一面の星が映る。こ、これはスゴい。横浜では見ることのできない星の大洪水、天の川がうっすら見えた。
満天の星にも感動したけど、空に雲がないことにも感動した。晴れてるじゃん!まさに快晴じゃん!
もしかして天気予報は大外れで今日は真夏のようなピーカンになるのかも・・・と思ったら、時間が経つにつれて、星は霞んでいき、辺りが明るくなるにつれて霧に包まれ、空にはいつの間にか雲がかかっていた。さすが朝霧高原、名に恥じぬ展開。どうやら晴れはなさそうだけど、雨も降らなさそうである。いや、これまでの天気予報を考えれば、もう充分くらいの奇跡である。
辺りが次第に明るくなってきたので、しゅんすけたちも自転車を組み立て、タイヤの空気圧をチェックし、準備万端、スタート地点の会場へ向かった。いよいよイベントが始まるのである。
スタートは道路混雑を避けるために数十台ごとに区切られておこなわれる。ランニングのように一斉スタートがないため、順番が巡ってくるまで待っていないといけない。だから最初のスタートからしゅんすけのスタートまで少々時間がかかるわけである。
そんなわけで、しゅんすけがスタートしたのはスタート時刻の6時から遅れること10分弱。明るくなってきた朝霧高原の坂をしゅんすけと愛車のこてつ号が滑り出したのだった。

※(左)スタート直前のさきこ。(右)スタートに向けて参加者が集結。
コースの最初はかなり長い下り坂。
去年は10月開催だったので、この坂を下る風が非常に冷たくて、まだウォーミングアップできていない身体をいきなり冷やしたものだけど、今年は9月開催なので、ひんやりした風の中を下っていくのは気持ち良かった。3キロほど下り、しゅんすけたちが宿泊した旅館の角を曲がると、しばらく平坦な道が続く。ここから徐々に身体が温まっていく。雲の中に丸い太陽が見える。陽が昇って急速に霧散しつつある霧の中を進む。なかなか快調な滑り出しである。呼吸がリズミカルになってきた。
細かいアップダウンをクリアしていく。しゅんすけの脚はまだ全然大丈夫、景色を楽しむ余裕すらあった。しかし、最初の試練は唐突に訪れた。
15キロ付近からの緩やかな上り坂である。これは延々40キロ付近まで25キロも続き、去年のしゅんすけはこの辺りで体力の半分以上を消費してしまったのである。たしかに始まったばかりで体力を温存しておきたい中で延々と続く坂道を見上げるのは精神的にキツい。サイクルスーツに身を包んだ玄人はだしな人たちに抜かれつつ、ゆっくり上る。これがもの凄く長く続くように感じられた。ある坂を上り切ってさきこを待っていると、後ろを走っていたさきこがなかなか現れない。坂道ではその豪脚ぶりを遺憾なく発揮するさきこだけど、今回はしゅんすけに遅れを取っていた。心配になって自転車を降り、休憩がてら待っていると、見通しの良い道の遠くで誰かがトラブルになって随行しているスタッフに囲まれていた。それが見覚えのあるノースリーブのウェアを着た女性であることが分かり、眼鏡をしているとは言え極度の近眼であるしゅんすけがよく見えたなーと思うけど、案の定さきこだった。さきこにはここで既に二つの問題が発生していた。その一つは自転車で、どうも坂道を上っている間にフロント・ディレイラーを切り替えようとしてチェーンが外れたようである。スタッフが集まっていたのはこのためで、早速チェーンを直してもらっていた。そしてもう一つの、さらに深刻な問題とは、懸念していた腰痛の再発、悪化であった。この時点で腰の痛みは如何ともしがたい状況で、まさに激痛と闘いながら激坂を上っていたわけである。
腰痛と闘いながらの走行はかなりストレスフルである。しかも、この腰痛が原因不明なのがさらにストレスを増大させているようだった。距離としてはまだ35キロ弱である。のこり80キロをさきこは走り切れるのか。

※朝霧の中を走る。これが気持ちいい。
目の前にエイドステーションを示す看板が立っていた。ずっと上りが続いていたので、ここで一旦休憩である。さきこは早速ストレッチ。しゅんすけもかなり脚に疲労が溜まっていた・・・が、これは去年と比べるとかなり低いレベルの疲労度である。最初の難関を迎えたこの時点で、これだけの疲労度で済んでいることは喜ばしいことである。まだまだ楽観はできないけど、これは去年から走りを重ねてきた成果であろう。
エイドステーションで振る舞われたバナナを食べて、再び自転車にまたがった。
さらに続く上り坂をパスして、スタート地点から40キロ。最初の難関をクリアした。ここから先はしばらく下り坂ベースのコースになる。景色と風を楽しみながらのサイクリングである。幸い太陽が出てきて、霧が完全に晴れ、青空が雲の隙間に垣間見られた。気分も上々、さぁ下るぞー。
去年から少々コースを変更したようで、がたがたの劣悪なアスファルトの下り坂だったけど、それなりに爽快に滑り下りていく。途中、演習に向かう自衛隊の戦車なぞが走っているのが見られ、またさきこは自衛隊専用車の窓から迷彩服に手を振られたそうである。う〜ん、こっちはラブ&ピースなサイクリングの最中だというのに(ラブの含有度はかなり低い過酷なサイクリングだけど)、戦争の練習とはなんだかなーである。でも戦車が走っているのを見てちょっとドキドキした。
そんな爽快下り坂がさらにまっすぐな道となって現れた。遠くまでカーブのない一本道。自転車は惰性でどんどん加速していくこの状況では、せっかく与えられた地球重力の演出に抗うこともないわけで、さすがにペダルをこぐことはしないまでもノンブレーキでこの下り坂を楽しんだ。いやもう殺人的に爽快である。これは佐渡島の下り坂を彷彿とさせる絶景快速ライド、いやもう「ヒャッホー!」なんて恥ずかしい奇声が出そう、いや出てた。ヒャッホォォォゥゥゥ!

※さきこ、ヒャッホウウの図。
さてそんな爽快ライドがあれば、当然そのツケがくる。
ひとしきり下り坂を楽しんだ後は、しばし御殿場の市街地を走る。去年はこの辺りで、ゆうに40キロを越えたその走行距離自体に感動してたけど、今年は違う。これから先に始まる上り坂という借金返済に武者震い・・・が、その前に去年も立ち寄った精肉店の絶妙コロッケを食べるのである。去年に引き続き今年のコースマップにも記載されているこのコロッケ。多数の店が立ち並ぶ富士山周回道路において、なぜ一介の精肉店がピックアップされているのかは未だに謎であるが、確かなのは特筆すべきとは言い難いまでも、ここで食べるコロッケ(しゅんすけはメンチカツを食べたけど)は疲れた身体には絶妙な美味しさなのである。

※去年もここでコロッケ食べたなぁ。
ここで身体を癒したしゅんすけたちは続いて始まる坂の序章に挑みつつ、籠坂峠の前では最後となるエイドステーションを目指す。さきこの腰痛はさらに酷くなる一方である。しかしここでさらに別の問題が発生した。愛車こてつ号の後輪がおかしい。さっきからお尻に感じる衝撃が直接的になってきた感じはしていたけど、その原因は後輪のタイヤの接地面がほとんど平らだったからであった。それはつまり、パンクである。
がーん!パ、パ、パンク?!
しゅんすけが一番恐れていた事態である。
今回のイベントに限らず、佐渡でも荒川でもそうだったけど、イベント中にパンクしている人をよく見かけた。走ることだけに集中したい中、自転車がパンクして走れなくなるのが一番キツい。きっと相当焦ってるだろうなと慮るにつけ、自分のことではないけどホント気の毒である。そんなパンクが今、楽しみにしていたこのイベントで、しかも激坂を前にして自分に起こってしまうとは、これを「最悪のタイミング」と言わずに何をそう呼べばいいのか。
目の前にエイドステーションが見えてきた。とりあえずタイヤに空気を入れてみよう。
立ち寄ったエイドステーションには、スタンド式の空気入れがないそうなので、やむを得ず携帯用の空気入れでタイヤに空気を入れ始めた。すると意外にも空気が入っていき、タイヤがそれなりの堅さを取り戻した。もしかしてこれは空気を入れるバルブが緩んでいたかもしれない。空気が抜ける音もしないので、そう思うことに決めた。ほどなく後ろを走っていた某ランニングクラブの仲間がエイドステーションに到着した。
さきこの腰痛は酷くなるばかりで、あるいはリタイアという選択肢もあり得る状況になってきた。さきこ自身がまだ頑張れると思っている間は彼女の背中を押すことにしよう。
さて、休憩をそこそこに出発である。ここで時間を潰すわけにはいかないし、そもそもさきこの腰痛、しゅんすけのタイヤなど懸念点が満載の今回のサイクリング、どこでどんな問題が噴出してもおかしくないのである・・・と思った矢先、しゅんすけのタイヤに異変が発生した。さっき空気を入れたタイヤが再びペシャンコになっている。あぁ、こりゃ本格的にパンクだわ。
自転車を止めて後輪を外す。たぶんタイヤの中のチューブを交換すれば何とかなるだろう。
それからしばらくの間、ホイールからタイヤを外して、中のチューブを取り出して、新しいチューブを交換して、またタイヤをかぶせて、空気を入れて、と一連の復旧作業をおこなったんだけど、最後の工程である「空気を入れる」がうまくいかない。つまり空気が入ってくれてないのだ。おっかしーなーと思ってもう一度チューブを取り出すと、そのチューブからシューゥゥゥゥ・・・と空気の漏れる音が・・・って、このチューブ、新品のくせにパンクしとるやん!それじゃスペアチューブの意味がないだろうが!待てよ、しゅんすけの予備のチューブは1本しかなく、そのチューブがパンクして使えないということは・・・もしかしてしゅんすけ八方塞がり?・・・ってことはこれ以上は走行不可能?・・・ってことはリタイア?うおおおおぉぉぉ!そういうわけにはいかーん!何とかしないとぉぉぉ!・・・と焦っているところへ
「どうしました?」
と聞いてくる人。スタッフが通りかかったのである。おお、まさに地獄に仏である。
早速事情を話してみると、近くにメカニックスタッフがいるというので来てもらった。これは何とかなるかもしれない。
メカニックスタッフが見たところ、チューブ交換しなくても、チューブの穴の部分にパッチを当てれば応急的に塞ぐことができるらしい。おお、この方法は知ってはいたけどやり方がよく分からなかったので、道具を揃えてなかったんだけど、そういう意味では勉強になる。
そんなわけで、しゅんすけの絶望的タイヤパンク問題はこの手際のいいスタッフの修理のおかげで解消し、しゅんすけは引き続き坂を上り始めるのであった。
さて、須走から本格的なヒルクライムに入る。この時点で既に歩いて自転車を押している人も何人もいる。
しゅんすけは去年に引き続き絶対に歩かないことを心に堅く決め、一旦コンビニで体勢を整えてから登板にチャレンジした。
道中は予想通りかなりキツい坂であった。それでも去年休憩を取った場所を脇目にパスしてペダルを踏み込んだ。こういうヒルクライムだと、目の前のアスファルトしか視界に入らなくなってどんどん自分が没入していくのが分かる。今目の前にある坂、というか今脚に感じるペダルの重さ、というか地球の重力そのものというか、とにかく自分の進行を妨げる目に見えないナニモノかに対峙、対話するといった感じだろうか。無心でこぎ続ける自分がいた。
しかし、後ろを走るさきこの様子がおかしい。もはや腰痛は耐え難い状況にまで悪化している。このまま一緒に上って大丈夫なのか。心配するも何もできない自分が歯痒かった。
しばらく進むと、坂の傾斜がだんだん緩やかになってきた。これはもしかしたら頂上が近いのかもしれない。すると、山梨県に入ったことを示す看板が頭上を通り過ぎた。これはほどなくこの坂が終わることを意味していた。そしてそれはしゅんすけにとって意外に早く訪れた看板だった。去年はもっと長い時間苦しめられたハズの坂道がもう終わろうとしているのだ。県境を越えるとすぐにヘアピンカーブがあって、その先に求めていた看板が見えた。ついに籠坂峠の頂上に到達したのである。

※富士登山の須走口前。ここから本格的に上りが始まる。

※腰痛に耐えるさきこ。

※山梨県に入った。籠坂頂上はもうすぐだ!

※峠を越えたぜ!
悔しい思いをしながら上った籠坂峠から1年、今年は一度も休まずにクリアできた。
いや、キツかったー・・・と言っても実は去年と比較してが全然疲労していないことに驚く。ヤビツ峠の方が断然長いし、傾斜もキツかったことを思うと、これまでこの坂を上ることを意識して練習してきた成果があったというものである。「身体を鍛えることは決して裏切らない」とか「練習は裏切らない」とかいうけど、その意味が分かった気がした。1年間努力してきたのが報われた。
籠坂峠の頂上でガッツポーズで写真を撮るも、さきこは今の坂で完全に腰をおかしくしてしまった。山中湖で一旦休憩すべく坂道を下ることにした。彼女曰く、ペダルを踏み込む力が過度に強くなければ、この先も大丈夫な感じだそうな。
山中湖へ向かう道を高速で下っていく。毎度こういう場面って殺人的に気持ちいいもので、写真を撮るために一旦停止するか、このスピード感に刹那的に身を委ねるかを迷ってしまうのだけど、この坂道を下るために払った代償が大きいほど止まって写真なんか撮ってられない。この下り坂も激坂を越えてきて与えられたご褒美と思えばいちいち止まっていられない。一気に山中湖に向けて下っていった。
山中湖で一旦休憩。
さきこの腰をマッサージしたりして少し様子を見ることにした。道中はまだイベント参加者が多い。
去年は山中湖畔のレストランにうっかり入ってしまい、コーヒーなぞ飲んで優雅に過ごしていたら時間がなくなってしまうというおマヌケな結果になってしまったので、ここはさくさくと休憩、さくさくと昼食を摂った。
さきこの腰痛による休憩もそうだけど、こてつ号のタイヤがパンクして時間をロスしたこともかなり影響して、山中湖に到着したのは実は去年と同じくらいの時間だった。ここからハイペースで巻き返さないと。

※山中湖畔の道路を走る。
山中湖から河口湖、西湖を巡る道を走る。延々と伸びる道をひたすらこぐ。
その途中に、しゅんすけが写真撮影を楽しみにしている場所があった。西湖から精進湖へ向かう長い下り坂である。それまで青木ヶ原樹海の中を走っていたのがふいに視界が開ける坂道になるのだ。この道は去年も走ったけど、なかなか気持ち良かったので今年は写真に撮りたかったんだよね。ただ長い坂道なので、自転車の速度は最高で時速50キロくらいになるから気をつけないと。
いよいよ視界が開け、自転車が徐々に加速していく。まさに今、カメラの電源をオンにして撮影しようとしたその時「電池を交換してください」のメッセージ。ガーン!時速40キロで下っている中で電池交換はさすがにできないわ。そして次の瞬間、動揺してバランスを崩し、時速50キロになろうかという中、カメラを取りこぼしそうになって、片手運転でカメラをお手玉する感じになってしまった。こ、これには肝を冷やしたわ。
結局、カメラに気を取られて下り坂の爽快感を充分感じられず、加えて写真も撮れていないという散々な状況で楽しみにしていた坂を下り切ってしまったのだった。・・・がく。
坂を下るとそこは本栖湖の入り口。前週に某ナイキのランニングイベントで10キロを走破した本栖湖である。こんな遠隔地に2週続けて来るとは感慨深いわ。

※(左)河口湖近く。(右)西湖近く。

※この道の先に、爽快ダウンヒルが待っていたのだが。

※向こうに本栖湖が見える。
本栖湖を越えると再び坂道になる。しかし、ここに来てしゅんすけの気持ちは軽かった。この坂の途中で走行距離は100キロになる。去年は制限時間である16時のその3分前に100キロに到達したのだけど、今年はまだ15時過ぎ。制限時間内のゴールが確定的になっていた。
そして最後の上り坂を上り切った。

(左)本栖湖先の坂道。(右)静岡県に入った。ゴールまであと少し。
ここから先は下り専門。さきこの言葉を借りれば、「ここまで頑張ってきたご褒美の下り坂」である。去年はこの下りを失意の中で走りつつ、不意に差し込んだ夕焼けの陽光に非常に感動したものだけど、去年よりも1ヶ月以上前に開催された今年はこの時間では太陽はまだ高く、この日の厚い雲の中に隠れてしまっていたのは残念ながら、それでも朝霧高原の風景はまるで昔旅行した北海道を彷彿とさせ、爽快ダウンヒルを楽しむことができた。

※爽快ダウンヒル。(右)おっ、牛がいる。

※(左)ホント北海道を思わせる風景。(右)これが「ご褒美」のダウンヒルだ。
ここまで来ると、もはや苦しかったことも含め、走行距離117キロのすべてが懐かしく、終わってしまう寂しさを禁じ得ない。あれだけ楽しみにしていたサイクリングが残り5キロ程度で終わってしまうのだ。たしかにお尻の痛みは酷くなってきたし、さきこの腰痛が一向に回復しないこの状況を早く終わらせたい気持ちも大きいけど、こうして終わりが近づくとこのまま自転車を下りることがもったいない感じがするのである。
最後のカーブを曲がりしばらく行くと、ゴールの富士ハーネスの施設が見えてきた。施設に入ってそのままゲートをくぐる。ゴールである。時間は15時35分。タイムとしてはまあまあだろう。
いやそれにしても、よく走れたものである。
途中さきこの腰痛やこてつ号のパンクもあったけど、見事制限時間内にゴールしたのである。
この日一緒に参加した自転車仲間の夫婦は、しゅんすけたちよりも20分くらい先にゴールしていたようでお互い完走を称え合った。
振り返ると、キツかったとは言え、去年のような地獄ライドほどではなかった。特に最初の坂道と続く籠坂峠は去年のような一杯一杯さはなくて、坂を上り切ってなお余力があるほどだった。籠坂を越えて余力があるというのは自分でも驚いた。これが練習のタマモノというヤツだろうか。そして、100キロレベルの走行にそれほど恐れを感じなくなった。自転車がもっともっと好きになった日であった。去年から目標にしてきたこのコースの向こうに新しい挑戦のためのフィールドが見えてきたようである。
さて、次は何の大会に出ようか。
今回一緒に走ったご夫婦の旦那さんは10月に「ツールドちば」に出場するんだそうな。3日間で400キロ近くを走り倒すという過酷なレース。さすがに3日連続で100キロ超のロングライドはしゅんすけにはキツいけど、何かまたイベントがあれば出てみたい。また、そのために自分で自分に試練を課し、より遠くまでより速く、または過酷な峠越えへのチャレンジをしていきたい。特に峠を越えた時の達成感は格別である。
空を覆っていた雲が異様な様相を呈してきた。遠くで地響きのような音が響いていた。それまで何とか保っていた天気が急速に崩れ始めていた。まるでイベントの終了を待っていたかのようである。
まだ脚に疲労が残っていたけど、むち打って立ち上がり、駐車場へ向かった。
自転車をバラしてクルマに積み込む。汗に濡れた服を着替えてクルマに乗り込んだ。走り出してしばらくすると、クルマのフロントガラスの雨粒の量が途端に増えて一気に雨になった。激しい稲光を伴った大雨。あー、これの前にゴールしていて良かった・・・。
雨の中、睡魔と戦いつつもクルマに乗っているのは怖いので、足柄SAに立ち寄ったら、ここには入浴施設があって、思わず風呂に入ってしまった。身体を洗い流し、気持ちがすっきりした。時刻が少し遅くなったけど、これで安心して帰れるというものである。
熱い湯に身体を浸し、脚をマッサージしながら、この日のサイクリングに思いを馳せる。次のイベントが早くも楽しみになってきたのであった。

おしまい。 |